『第569話』 【パーキンソン病】頭や手足震えたら受診を
頭が小刻みに振れて困るという相談があった。会話中に相手も気になるだろうが、歯の治療や理髪店に行ったときなどはお互いが非常に苦労するという。
頭や手、足が震えてくる病気にパーキンソン病がある。手が震えて食事ができない、足が震えたりこわばったりして最初の一歩がうまく踏み出せないなど手足の症状から始まることが多い。
パーキンソン病は50代から60代にかけて発症する。最初は片足や片手だけだった症状が徐々に進行し、やがて両側とも震えるようになり生活に支障が生じてくる。しかも、じっとしているときにこの震えが起こるのが特徴だ。
一方、頭や手は震えるが足に震えが生じない場合はパーキンソン病ではない。寝ているときやじっとしているときは震えは起こらず、なにか動作をしようとすると手や頭が小刻みに震えるといった場合もパーキンソン病ではない。
こちらは本態性振戦といってパーキンソン病と区別している。20代から発症し高齢になるほど発症率が高くなるが、病気が進行することはない。生活に支障がないようであれば、特に薬も服用しない。
パーキンソン病は、脳の神経細胞同士の情報をやりとりするドーパミンという物質が少なくなることで起こる。したがって、少なくなったドーパミンを補充するという薬物療法がとられる。
しかし補充薬はやがて効きが悪くなることと、また効き過ぎると脳の中のドーパミンが増えすぎて、自分の意思とは関係なく体が動くジスキネジアという症状が現れることがある。
そこでドーパミンの取り込みをする細胞、すなわちドーパミン受容体の働きをよくすることでドーパミンの取りこぼしをなくそうとする薬を併用する。どちらも飲み始めに吐き気や嘔吐、食欲不振といった副作用が現れることがある。個人差はあるが1、2週間ぐらいで体が薬に慣れて、消化器症状も落ち着いてくる。どちらも勝手に服薬を中止せずに飲み続けることが大事だ。
震えを心配していても症状は改善しない。躊躇(ちゅうちょ)せずに受診することが必要だ。