『第568話』 【便秘】重い症状は早めに受診

便秘で悩んでいる人は多い。薬もいろいろと試した。この程度で満足するしかないのかと訴えられ、こちらも悩んでしまうことさえある。

便秘薬には、作用が緩和で習慣性が少ない塩類下剤、便の量を増やす膨張性下剤、腸壁を刺激して腸の運動を活発にする刺激性下剤などがある。

慢性の便秘を大別すると、弛緩性便秘、痙攣(けいれん)性便秘、習慣性便秘(直腸性便秘)がある。便が出なくなるという症状は同じだが、その便秘になる機構は全く異なる。

通常、大腸は蠕動(ぜんどう)運動をして消化物を肛門の方向ヘリズム良く次々と送り出している。しかし、ストレスがかかると腸管平滑筋が活発に動きすぎて、うまく消化物を移動させることが出来なくなってしまう。これを痙攣性便秘という。

このタイプでは、しばしばおなかがはり、腹痛を伴うことがある。このとき痛み止めを使うと、さらに便秘が悪化することがある。その理由は、消化管の痛みは消化管の痙攣が原因で、その痛みを止めるためには抗痙攣薬を使う。しかし、抗痙攣薬の抗コリン作用によって、痛みは治まるが同時に腸管の動きも止まり、消化物が送られなくなってしまうからだ。

痙攣性便秘が悪化すると、便秘と下痢を繰り返し、過敏性腸症候群と診断されることもある。便は、ウサギの糞(ふん)のようにコロコロした感じになることが多い。

弛緩性便秘は、腸が緩んで動かなくなってしまうために、消化物が滞留して便秘となる。便意はあまりなく、便は堅く太くなる。食物繊維を積極的に摂取し、腹筋を鍛える努力をすると改善する。

習慣性便秘は、小食や偏食、不規則な食事や排便習慣から起こる。これは、しっかりとした食事を摂り、生活リズムを整えることで治る。

便秘に使う大衆薬(OTC薬)の約9割はセンナ、大黄、ピコスルファートナトリウム、ビサコジルなどの刺激性下剤だ。これらの薬は、主に弛緩性便秘に使う。

刺激性下剤は、痙攣性便秘にはあまり効果がなく、腸管運動抑制剤、自律神経調整剤、場合によっては抗うつ薬や抗不安薬が必要となる。

たかが便秘と思っていると、腫瘍(しゅよう)などの器質性便秘の可能性もあるので、早めの受診をお勧めする。