『第564話』 【夏の一酸化炭素中毒】発生源の確認と換気を

夏の暑いさなかに、一酸化炭素中毒による死亡者が出ている。一酸化炭素中毒といえば、暖を取る冬の事故という思いが強い。

原因は、ストーブなどを換気不十分な状態で焚(た)いたためではなく、自動車の排ガスによるものだ。換気が不十分であるという条件は同じだが、自動車の冷房を入れるために長時間アイドリング状態にしたため、排ガスに含まれる一酸化炭素ガスが充満し、これによって一酸化炭素中毒が起こった。

実は、換気状態が良いからと安心していられない事故もある。屋外においてエンジン式の発電機や溶接機などの内燃機関の排ガスを近くで長時間吸引していたために、一酸化炭素中毒になった例があるからだ。キャンプ地などで自動車の近くにテントを張るときに、テントの向きと自動車の排気管の位置開係については十分に注意する必要がある。

脳が必要としているものに酸素とブドウ糖がある。どちらも足りなくなれば意識が無くなり、危険な状態になる。

脳に酸素を供給しているのは、血液中のヘモグロビンだ。一酸化炭素は酸素が結合するよりも200~300倍ヘモグロビンと結合しやすい。このため一酸化炭素ガス濃度が高くない大気環境にいても、最低1%程度のヘモグロビンが一酸化炭素ヘモグロビンになっている。また、タバコの煙には数%の一酸化炭素が含まれるため、喫煙者では5%程度が一酸化炭素ヘモグロビンとなる。この値が10%を超えると酸素不足による症状が出てくる。

一酸化炭素のppm濃度に暴露した時間を掛けた値が600を超えるとこのような状態となり、1,500で死に至る。自動車の排ガスには30,000~70,000ppmの一酸化炭素ガスが含まれ、容易に1,500を超える。

もうひとつ怖いのは、長時間の暴露を受けると、命が助かっても意識障害などの後遺症が残り、悪くすると植物状態になることだ。

昔に比べれば、冬の時期の一酸化炭素中毒事故を防ぐ対策は暖房器具の構造を含めて進んできた。しかし環境が変わり、自動車や各種内燃機関など、一酸化炭素の発生源が暖房器具以外にもあることを忘れると事故につながる。一酸化炭素中毒防止対策は、発生源の確認と十分に換気を行うことだ。