『第561話』 【未承認医薬品】多発する健康被害

健康や痩身(そうしん)という言葉は、魔物だ。それほど太っているわけではないのに、単にもっと痩(や)せたいという願望を持っている人は多い。

平成14年2月から5月にかけて、60代の女性2人が、中国から個人輸入した減肥を標榜(ひょうぼう)する未承認医薬品の御芝堂減肥▲嚢(おんしどうげんぴこうのう、発売元・広州御芝堂保健制品有限公司)を服用した。服用1カ月後、全身倦怠(けんたい)感、吐き気、食欲不振の症状が現れ、肝機能値の異常が認められた。1人は急性重症肝不全により約2カ月後に死亡し、もう1人も入院加療した。

また、3月に、50代の女性が痩身の目的で、中国から個人輸入した未承認医薬品の■之素▲嚢(せんのもとこうのう、発売元・広東恵州市恵宝医薬保健品有限公司)でも、服用1カ月後に黄疸(おうだん)が現れ、肝機能値に異常が認められて入院加療している。これからは、乾燥甲状腺末(こうじょうせんまつ)と食欲減退作用があるフェンフルラミンが検出された。

健康な人が乾燥甲状腺末を服用し続けると甲状腺機能亢進(こうしん)症を発症し、体重の減少だけではなく、血圧が上がり、微熱、手の震え、多汗が起こる。こうした事例は、過去に多数報告がある。

未承認医薬品や健康食品を個人輸入して服用することは、法律上問題はない。ただし、健康被害が生じた場合には、自己責任で対応することになる。

現在まで、これらの未承認医薬品から、重大な肝機能障害を引き起こす成分は見つかっていない。未確認成分を分析することは難しく、症状などから入っていると思われる成分を予想して分析する。従って、確実に含有成分を特定していくためには、製造業者からの情報入手が必要になる。

個人輸入の医薬品については、副作用や適正使用情報などが皆無といっていい。毒であっても情報があれば薬として使用することは可能だが、国情が違う諸外国の未承認医薬品については使用しない方が懸命だ。中国製食品による被害はその後、拡大している。

▲は「にくづき(月)」に「交」、■は「いとへん(糸)」に「千」。