『第550話』 【報酬改訂】薬の値段に大きな隔たり

「この薬はかなり高いのでしょうか」という県民からの問い合わせがあった。成分はコハク酸スマトリプタン。平成12年に発売された新薬で、片頭痛の患者に過去の鎮痛剤が効かなかったときに使用する特効薬として期待されている。

片頭痛薬として過去から使われてきたエルゴタミン製剤は、1錠当たり先発品が19.5円、後発品は7.8円だ。ところが、コハク酸スマトリプタンは、1,052.9円。昨年発売された同種のゾルミプタンは1,059.9円となっていて、古くから使われてきた薬との価格差は相当なものだ。窓口で支払う自己負担額で数千円の差になる。薬局で間違ったと思われても仕方がない。

この4月に診療報酬、調剤報酬などが改訂された。薬に関する分野も大幅に変わった。

まず、後発医薬品の利用促進対策が盛り込まれたことがある。新薬、先発品、特許が切れてから発売されてくる後発品と、片頭痛の例の通り医薬品の価格には大きな隔たりがある。高くても新薬を使わなければ治療できない疾病がある。しかし、価格の安い薬で十分治療できるのであれば、新薬を使う必要はない。さらに、場合によっては先発品ではなく、後発品で十分なこともある。

欧米ではすでに、患者自身で薬の効果と負担額を比較して、薬を選べる環境が整っている。日本では完全に諸条件が整ってはいないが、処方によっては選ぶことが可能になってきた。

もう一つの大きな改訂内容は、一診療で処方できる薬の投与日数が新薬・麻薬・向精神薬を除いてなくなったことだ。医療保険では14日投与を原則として、30日または90日の投与を認める疾患と薬が決められていた。しかし、現在はこうした使用日数制限はないといってよく、医師の裁量に任されている。

甲状腺機能障害などに使う薬は、病状が安定していれば長期に同一処方の薬を飲み続けてもらう。この処方で120日処方というものもあり、1回に窓口で支払う金額が増えて戸惑っているという話も聞く。自己負担額に疑問があれば、その変更理由について薬局窓口で遠慮なく聞いてもらいたい。