『第547話』 【痩身健康食品】安全性や使用法に注意
ダイエットの話題は事欠かない。ダイエット自体に関しても賛否両論、痩身(そうしん)健康法も怪しいものから確かなものまでさまざまだ。
肥満治療に使う薬はある。しかし、強度の肥満で、医師の処方が必要であることから、日本ではほとんど使われていない。そのため、関心はダイエット食品に集まっているようだ。
医薬品ではないダイエット食品や健康食品に関することは、科学的な根拠が示せない場合がほとんどで、当センターでは分からないと答えることが多い。
国立医薬品食品研究所では、ダイエット食品として利用されているガルシニア抽出物について、ラットを用いた長期毒性試験を実施している。その結果が3月に厚生労働省から提供された。内容は、飼料にガルシニアパウダーを5.0%混合して雌雄のラットに摂取させたところ、精巣への影響が強く示唆されたというものだ。体重50キロの人であれば、ガルシニアパウダーに含まれるヒドロキシクエン酸量に換算し、安全係数を考慮して1日1人当たり1.5グラムを超えないようにすることが必要と考えられる。現在まで集積したデータでは、まだ1日摂取許容量を示せない。
ガルシニアはインドやスリランカに自生する常緑樹で、果皮を乾燥粉末化したものは爽快(そうかい)な酸味があり、昔から香辛料としてカレー、魚の漬け込み等に使われている。
乾燥果皮から水で抽出したエキスを乾燥粉末化して得られたガルシニアパウダ一には、ヒドロキシクエン酸が66.2%含まれている。
糖分は生体内の解糖系とクエン酸回路でエネルギーになる。余った糖分は脂質に合成して貯蔵される。ヒドロキシクエン酸は、脂質を合成するときに使われるATPクエン酸リアーゼのはたらきを抑える。しかし、脂質に合成されなかった代謝成分がどのように生体に影響するのか不明な点が多い。
ケシ、麻黄、ジギタリスなどを原料に約8割の医薬品が自然のものから開発されてきている。したがって、「原料が天然成分だから身体に安全」等の理由はまったく見当違いだ。また、こうした神話から摂取量が多くなる傾向がある。
流通している健康食品の安全性についても、報告例は少ないが、情報を集め、安全性や使用方法を確認してもらいたい。