『第545話』 【花粉症】漢方薬で乗り切る
薬局の店先に並ぶ商品群を見ると、その季節に流行している病気が分かる。もちろん、この季節は花粉症だ。
特殊なマスクやメガネ、点鼻薬、抗ヒスタミン剤とさまざまな製品が並ぶが、毎年さほど代わり映えしない。特効薬がない以上、予防に力を入れ、最小限のつらさで乗り切るしかない。
アレルギー性鼻炎はくしゃみ、鼻水、鼻詰まりが繰り返される状態だが、季節性と通年性がある。1年を通じて鼻炎症状が生じる通年性アレルギーはダニやペットの毛、フケなどが抗原物質であることが多い。
一方、季節性は特定の季節に起こる。花粉症はまさにその代表だが、なにも春先だけに起こるわけではない。特にスギ花粉が2月~4月に集中し、イネ科の花粉に弱い人では5月から9月まで悩まされる。ほかにもブタクサ科、ヨモギ科など抗原となる植物の花粉カレンダーによると、花粉が飛ばないのは12月だけである。
マスクやメガネなどの花粉症対策グッズが売れるのは、抗原となる花粉が鼻粘膜や眼に付かなければアレルギーが起こらないからだ。しかも時期が特定され、短い期間に大量に抗原にさらされるので、眼、鼻、のどともに一斉に症状が出るのが花粉症だ。
抗アレルギー剤と呼ばれるものには、抗ヒスタミン剤が配合されている。鼻の症状は楽になるが、眠気をもよおすので仕事や家事、勉強の間もぼんやりする。特に怖いのが車の運転だ。
このようなときは、麻黄を配合した小青竜湯がよい。麻黄には興奮作用があり、眠気とは逆に目がさえてくる。抗ヒスタミン剤と併用して眠気を抑えてもよい。
ただし、だらだらと水のような鼻水が出る人向きで、胃腸の弱い人には適さない。一般に漢方薬は食前、食間に服用することになっているが、胃腸障害を考慮して小青竜湯は食後に飲むようにする。
鼻詰まりの方が強い場合は葛根湯を使う。この中にも麻黄が含まれる。葛根湯に辛夷(しんい)と川▲(せんきゅう)を加えた「葛根湯加川▲辛夷」は、鼻詰まりによる頭重感や頭痛をすっきりさせる。こぶしの花のつぼみである辛夷が鼻粘膜のむくみをとり川▲がそのウミをきれいに出すからだ。
▲は「くさかんむり」に「弓」。