『第544話』 【残薬】使用せずに捨てるのが原則

服用されないで残った薬を残薬と言う。薬が残る理由にはさまざまな理由がある。飲み忘れ、服用回数の間違い、症状が途中で良くなった場合などだ。病気を治療するためには確実な服用が欠かせない。このため、コンプライサンス(服用率)を向上させるためのさまざまな工夫は、薬学的管理の中で最も重要な項目になっている。

しかし時に、風邪薬や解熱鎮痛剤は少し多めにもらっておいて、次の風邪に備えたいという話をよく聞く。実際、風邪をひいたので、以前にもらった薬を服用したいが、服用してもいいかという電話をもらうことがある。回答は、服用しないでください、廃棄してくださいという画一的なものだ。

その理由には3つある。1つめは、有効期間が明確ではないこと。食品よりは長いが、薬にも有効期間がある。OTC薬(大衆薬)も同様で、この管理があいまいなケースが多い。2つめは、一言に風邪や痛みといっても、病状が異なることで全く違う薬が使われること。腹痛なのに、頭痛薬を使っていたという例もあった。腹痛を抑える薬は抗痙攣(けいれん)薬で、頭痛薬とは全く違うものだ。3つめは、大人が使えても子供には危険な成分があることだ。解熱鎮痛剤のアスピリンなどのサリチル酸製剤は、死亡率の高いライ症候群を発症することが疑われていて、15歳以下の小児には使わないのが原則だ。また、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウムはインフルエンザ脳炎・脳症患者に使用すると重症化することが知られている。従って、これらの成分は小児のインフルエンザに伴う発熱に対して投与しないことになっている。

この度、厚生労働省はこの残薬の服用について、注意を喚起した。2月になって、インフルエンザ脳症による死亡例で、これらの成分を服用していたケースがあったこと。さらに、受診前に、これらの成分を含む残薬を自己判断で服用させて、インフルエンザ脳症が悪化した例があったことからだ。

OTC薬も含め、子供に服用させてはならないものがある。購入時には、必ず薬剤師に相談し、適正な使用方法を確認してもらいたい。