『第540話』 【便利な塗り薬】特性知ってリスク避けて

肩をすぼめて歩いているせいか、冬は意外に肩が凝る。肩凝りは肩の筋肉を酷使したときだけでなく、じっと同じ姿勢をしていたときにも起こる。頭や腕の重さを支えようと首、肩、背中の筋肉が酷使されているからだ。肩こりは血行が良くなると消える。

血行が悪いと筋肉に十分な酸素が行き渡らず、筋肉を動かすためのエネルギーをつくろうとしても不完全燃焼となる。この燃えかすである乳酸が神経を刺激して痛みを起こしている。マッサージや肩たたき、入浴などで血行を良くすると、この燃えかすは血流に乗って運び去られ、痛みが消えていく。

張り薬はマッサージの代わりに薬効成分が血行を良くする。冷たくてひんやりする夕イプの張り薬はメントールやサリチル酸メチルが冷感刺激をおこす。スーとした気持ちよさがあり、知覚神経を軽くまひさせて痛みを取り、その後ジンジンと血行を良くしていく。

温感タイプはメントールの代わりにトウガラシエキスが入っていて、これが刺激となって肩が温かくなっていく。温感タイプは慢性的な肩こりに適している。寝違えたようなときの肩や首の痛みは炎症を起こしているので血行が良くなるとかえって痛みが増す。マッサージなども避けるべきだ。

最近は、飲み薬や座薬として使われていた鎮痛成分のインドメタシンが塗り薬となって市販されている。スイッチOTCの一つで、以前は病院だけでの使用を認められていたものだ。塗るだけで皮膚から吸収され、血液中に溶けて痛みを止めるので手軽だし、胃を荒らすこともない。

しかし皮膚から吸収させる薬はかぶれやすいことも事実だ。一度かぶれたことがある薬の名前や成分はしっかりと記憶しておいてほしい。

同じ成分が内服や座薬など違う形で体内に取り込まれた際にアレルギー反応を起こすことはほぼ間違いない。インドメタシンの塗り薬にアレルギーがあった人が手術前に医師に知らせず、手術後に使用されたインドメタシン座薬で命を落とした例も報告されている。

より使いやすい形の薬剤がこれからもどんどん登場してくると思うが、薬はリスクを持っていることに変わりはない。