『第527話』 【H2ブロッカー】胃かいようの手術激減

薬局で多くのスイッチOTC薬を見かけるようになった。

OTC薬とはカウンター越し(オーバー・ザ・カウンター)に売られる医薬品のことだ。

薬剤師が効能効果や使用方法を説明して販売しているのでこの名がある。

これまで病院や診療所に行くか、処方せんでしか入手できなかった、切れ味が良く、効能効果の高い医薬品が一般用医薬品に移ったものをスイッチOTC薬と呼び、薬局で購入できる。

OTC薬は、胃腸薬だけでも550品目ほどあるといわれている。従来の和漢薬などを中心にした制酸剤、健胃消化剤などが大多数を占める中、6年前に画期的なスイッチOTC薬が現れた。

H2ブロッカーと呼ばれる医薬品だ。これはノーベル医学生理学賞の対象にもなった。

この薬は、胃酸分泌を促進する化学物質ヒスタミンの代わりに、胃壁にあるヒスタミンH2受容体にくっつく。するとヒスタミンはこの受容体に結合できない。結合しないと胃酸は分泌されない。

胃・十二指腸かいようで胃に傷があると胃酸にさらされてきりきりと痛む。しかしこの胃酸が抑えられるので痛みはぐっと楽になる。

この薬の登場で胃かいようの手術が激減した。

H2ブロッカーの製品は小包装になっている。使用の際は最少限度にとどめ、効果がないときはほかの治療に切り替える必要がある。

また使用前に薬剤師からこの薬の副作用に関する説明を受け、それを十分理解した上で服用してもらいたい。

貧血や血小板減少などの造血器障害が起こったり、通常の量でも精神錯乱状態に陥ることがあるからだ。

また主に腎臓(じんぞう)から排せつされるので、高齢者のように腎機能が低下している場合は用量を減らす必要がある。

副作用のことを書くと心配する人が多いが、比較的安全な薬であるということからOTC化されている。

画期的な薬ではあるが、供給者側と使用者側の責任が半々に問われる薬でもある。