『第526話』 【緑の香り】動脈硬化防ぐ物質と同類

青い色は食欲中枢を鎮め、食べ物をまずく見せる色だといわれる。そういえば青い色の野菜や青い花はそう簡単に見つからない。

ダイエットのためにわざと青色の食器を使ったり、青色に着色したお米を食べる人もいる。

自然界には緑が豊富だ。初夏など緑が色濃くなる時期に森林を散歩すると、緑の美しさだけでなく、独特の香りを感じ、気持ちが穏やかになる。

この香りは青葉アルコールや青葉アルデヒドと呼ばれ、紫外線の刺激を受けて作られる。

その成分は人間の体の中で生成されるプロスタグランディンという物質と同類だ。

人間の体も紫外線を浴びて皮膚が炎症を起こすとプロスタグランディンが作られる。

プロスタグランディンにはさまざまな種類があり、1つは熱や痛みをもたらし、それ以上の刺激や障害から身を守るように知らせる。

一方で、血流を良くし、障害を受けた部分の修復を早める。この作用は血栓をできにくくし、動脈硬化を防ぐことにもつながる。

胃壁にあるプロスタグランディンは粘膜を保護したり、荒れた部分の修復をしたりする。このような特性を生かして名種のプロスタグランディン製剤が作られている。

逆にプロスタグランディンを抑えれば、痛みや熱をとれるので解熱鎮痛剤となる。

このとき胃内のプロスタグランディンも抑えるので、胃の粘膜を守ることができず、解熱鎮痛剤が胃を荒らす原因となる。

緑の香りを私たちが心地よく感じ、ストレスが軽くなることは実証済みだ。

植物が炎症を起こして生じた物質が植物自身にはどういう効果をもたらしているのかは不明だが、人間にとっては効果的に働いているのは興味深い。