『第521話』 【狂牛病】医薬品や化粧品ともかかわり

牛伝達性海綿状脳症よりは、狂牛病と言った方が一般的になっている。食肉や牛乳だけではなく、化粧品、医薬品、革製品と牛が人の生活と深いかかわりを持っていたことを再認識することになった。

報道では牛だけが強調されているが、ヒツジ、ヤギ、シカ、水牛などの類縁反すう動物由来の原料も対象となっている。

海外の評価で「高・中リスク」となっている臓器は、脳、脊髄(せきずい)、眼、腸、へんとう、リンパ節、脾臓(ひぞう)、松果体、硬膜、胎盤、脳脊髄液、下垂体、胸腺(せん)または副腎(じん)だ。膵臓(すいぞう)、肝臓、肺などはこれらよりも10万分の1以下の危険度にあたる「低リスク」の分類に入る。「リスクなし」と評価されている骨格筋、骨、心臓、血液、乳などは1億分の1以下の危険度。

化粧品に使われていた牛由来のプラセンタエキス(胎盤エキス)は既に昨年12月から化粧品には使用していない。

カプセル剤外被はゼラチンで作られている。ゼラチンは豚、クジラ、牛の皮、骨、腱(けん)が材料となるが、主に牛が使われている。こうした材料を酸またはアルカリで処理して、粗コラーゲンだけを取りだし、これを精製しているので問題はない。

散薬の増量剤として多用されている乳糖もアルカリ処理をして、タンパク質を除去しているので問題はない。

漢方薬には、牛胆石の牛黄、胆のうおよび胆汁を乾燥した牛胆、シカの骨質化していない幼角の鹿茸、ジャコウジカ腺分泌物の麝香(じゃこう)など牛類由来の医薬品がある。これらは、主に中国、アメリカ、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリアから輸入している。このうち中国以外の国は狂牛病発生の低リスク国になっている。中国のような発生リスク不明国の場合は、狂牛病の疑いがないことを証明する公的文書の入手を義務づけている。

イギリスでは牛18万頭が狂牛病に感染。これとの関連性が疑われている新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者は107人。日本は1頭のみで、狂牛病との関連性を疑われている患者はいない。

新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の潜伏期は10年。万全な予防対策とその実行を望みたい。