『第519話』 【誤嚥〈ごえん〉】「ゴクン」を確認し肺炎防ぐ

気温が低くなり、風邪の心配をするようになってきた。高齢者を在宅で介護する家庭ではなおさらだ。室内の温湿度の管理に気を配ることが必要だ。

寝たきりになると風邪から肺炎を併発するだけではなく、突如熱が上がり誤嚥(ごえん)性肺炎を起こすことがある。

人は、のどの奥に飲食物が入るとそれを飲み込もうとする嚥下反射が起こる。この反射によって喉頭蓋(こうとうがい)が気管をふさいで気管に飲食物が入っていくことを防いでいる。

高齢になるほどこの反射がうまくいかず誤嚥、いわゆる「むせる」状態が起こる。健康な人であれば、気管に入ったときでも咳(せき)反射が起こって気管支に入った異物を除去してくれる。しかし、脳卒中の後遺症などによって嚥下反射、咳反射ともにうまく働かないことがよくある。従って、「ゴクン」と飲み込んだのか、しっかりと見守ることが重要だ。

また、健康な人でも全く本人が気づかないうちに誤嚥が起こる不顕性誤嚥を起こしていることがある。特に高齢者では、健康であるかないかにかかわらず約半数の人は睡眠中にだ液が気管に流れ込んでいる。

このほか、嘔吐(おうと)などにより誤嚥が起こる可能性はどこにでもある。

誤嚥性肺炎は、歯を全喪失している高齢者よりも歯が残っている高齢者の方がなりやすい。これは、歯があると食べかすが残りやすく、また歯垢(しこう)が付きやすいために肺炎起因菌がすみやすい環境があるためだ。また、同時にだ液の分泌量が減るなどの変化も起こり、悪循環が生まれている。

こうしたことを防ぐためにも歯科医師の指導の元に口腔(こうくう)内の衛生管理をしっかりと行うことが必要だ。

脳卒中患者に薬を飲ませたときは、まひした側のほおの内側に薬が残っていることがあるので、口腔内の衛生状態と合わせて、薬を飲み込んでいるか確認をしてもらいたい。