『第512話』 【水害時の消毒】土壌汚染には生石灰を

 先日の大雨で、農作物や家屋の浸水被害が出た。水害時には下水道などからの汚物による汚染、細菌感染などが心配される。汚染を受けた周辺地区での防疫対策として、井戸水および井戸周辺、浸水した家屋の床や家具類、汚染した土壌などを消毒する必要が出てくる。n 土壌の汚染は広範囲にわたり、通常の化学的な消毒剤を使うことが難しく、家屋周囲の消毒にとどまる。消毒方法としては、生石灰(消石灰ともいう)を直接散布するか、水1リットルに対して生石灰40グラムを溶かした石灰乳を散布する方法がある。溶かすといっても完全には溶けないので乳白濁状態で散布する。生石灰は、水に入れたときに発熱するので、やけどをしないように注意が必要だ。n また、生石灰を長期間空気にさらしておくと、炭酸ガスを吸収して全く殺菌作用のない炭酸カルシウムに変化してしまうので、新しいものを使う。生石灰はその強アルカリ性によって、コレラ菌、赤痢菌、チフス菌に効果を示すが、消毒効果と使用方法から考えると完ぺきな消毒方法とは言い難い。n 臭気が気になるがクレゾールせっけんや、昔からうじ殺しに使ってきたオルトジクロルベンゼンなどのオルソ剤、あるいはクレゾールとの合剤を噴霧する方法があり、ふん便などによる汚染が考えられる場合に選択したい。n 畳の消毒は、これがまた困難を極める。床上浸水ではスポンジのように汚水を吸ってしまい廃棄が原則となる。汚染の程度が低い場合には、土砂などを十分に洗い落とし、逆性せっけん製剤を50~100倍に希釈した逆性せっけん水溶液に30分程度浸して、十分に水洗いしてから乾燥する。n 畳の下の床どこ、廊下、床、柱などは逆性せっけん水溶液を含ませた布でふくか噴霧してふき取る方法で消毒して乾燥する。n 逆性せっけんは、通常の手を洗うせっけん成分が少しでも残っていると消毒効果がなくなってしまうので、せっけんを使った場合は十分に洗い流してから消毒する。n 水害が起こらないことを祈るばかりだが、9月の台風シーズンを控え、心の準備だけはしておきたいものだ。n