『第511話』 【医食同源】夏バテ防止は食にあり

「医食同源」は1972年ごろに日本で造語されたとする語源研究結果がある。古代中国では、疾病治療の専門家を区別した時代があった。食物の誤りを是正して病気を治す食医(しょくい)、外科的治療を施す瘍医(ようい)、内科的治療を施す疾医(しつい)、そして動物の治療をする獣医の4つだ。「医食同源」はどうもこのあたりを語源としているらしい。今では、医薬品と食品とは元は同じ、疾病の予防と健康維持は食事からという東洋医学の思想として定着している。

古代中国で治療家を区分して、その最高位に食医を置いていたことは興味深い。風邪を治療するごろ合わせに「一に養生、二に薬」という言葉があるが、養生として重要なのが「食べ物養生」だ。しかし、どのようなときに何を食べたらよいか明確にしていないところがあった。

「薬」と「食」はその効果において重なっている部分がある。現在は、その部分を「サプリメント」という言葉で表している。ビタミンやミネラルなどの特定の栄養素を含む栄養補助剤もしくは栄養補助食品の意味合いで使い、法律的には、薬効表示ができない食品に分類してきた。

今年4月に、厚生労働省はより明確化を図るために、「保健機能食品」の分類を設けた。血圧を正常に保つことを助ける食品、便通を良好にする食品などの表示ができる「特定保健用食品」と、高齢化、食生活の乱れなどによって通常の食生活を行うことが困難な場合を想定して、不足しがちな栄養成分の補給・補完を目的とした「栄養機能食品」からなる。

利用するに当たっては、上限摂取量が設定されているビタミンもあるので、十分に相談したうえで使いたい。

貝原益軒は「養生訓」のなかで、「飲食は腹八分にとどめよ。同じ味の食事(偏食)は避けよ。夏は冷たいもの、冬は温かいものをとりすぎないようにせよ。新鮮なもの、季節にあったものを食べよ。鳥や獣の肉を少量にし、野菜を食べよ。食後に運動はするな」と述べている。夏バテ防止は食にあり、健康で暑い夏を乗り切りたいものだ。