『第507話』 【肉体疲労時】タウリン含む魚介類が効果
のどかな昼下がり、猫がそろりそろりと食卓に近づき、焼き立てのサンマをくわえてサッと逃げていく。古きよき時代を感じさせるワンカットだ。
猫にとってサンマやイワシは生死にかかわる食材だ。白米や牛豚肉類では十分に摂取できないタウリンというアミノ酸が含まれているからだ。猫はタウリンを生産する能力がなく、摂取不足になると網膜に変性が起こってくる。ネズミにはほかの肉類に比べるとタウリンが多く含まれ、そのため猫はネズミを捕るのではないかといわれている。
肉体疲労時にというテレビコマーシャルでおなじみのタウリンは、一般名をアミノエチルスルホン酸といい、硫黄を含んでいる。1827年に牛の胆汁酸から分離され、当時は胆汁アスパラギンと名付けられた。スルメに付いた白い粉はタウリンが析出したものだ。シジミ、カキ、イカ、タコ、カツオといった魚介類に多く含まれる。タニシなどの淡水系の貝類には少ない。これは海水域に生息する魚介類が海水の浸透圧を調節するために、タウリンを体内で使うためだと考えられている。
人の体内では、メチオニンとその誘導体からシステインが作られ、システインからタウリンを作るとき、ビタミンB6が必要となる。
体内には広く分布していて、人は体重の0.01%にあたる量を蓄えている。その7割が筋肉にある。特に、心臓、脳、目の網膜、白血球などには高濃度で存在している。
コレステロールは肝臓でコール酸へ変化し、タウリンやグリシンと結合して胆嚢(たんのう)に胆汁酸として貯蔵される。その結果、タウリンとグリシンは体内のコレステロール代謝を促進し、血清コレステロールを下げるとともに肝臓の機能を改善する。猫と同様に、人にも体内で生産できないアミノ酸が8種類ある。これが必須(ひっす)アミノ酸であることを1949年にローズが決定した。
バランスのとれた食事を心掛けなければならない理由の一つがここにある。