『第502話』 【笑い】脳に快感、免疫力アップ

いつでも大いに笑い、楽しそうにしている人はストレスがなさそうに見える。

実際、笑うことによってストレスで分泌されるホルモンの血中濃度が低下することはさまざまな方法で調べられ、実証済みである。

がんの患者さんたちを落語の寄席につれていき、始まる前に血液を採取する。大いに笑ってもらったあとでまた採血し比較すると、リンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性が高まっている。これは自己免疫力が高まったことを意味する。

人の細胞は一生のうちで3,000回ほど細胞分裂をくり返すとみられている。その中ではがん細胞になるもの、その一歩手前の前がん細胞になるものなどが時として生まれてくる。

このとき、前がん物質を正しい細胞に治したり、がん細胞を死滅させたりするのがNK細胞だ。

NK細胞をはじめとするさまざまなリンパ球ができるだけがんの発生を抑えるよう働いているが、ストレスはNK細胞などの活性を弱めることがわかっている。

またストレスが続くと、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、動脈を収縮させ高血圧を招き、心筋梗塞(こうそく)や脳出血の危険性も高くなる。

さらにストレスの持続は記憶をつかさどる脳の海馬を委縮させるため、痴呆(ちほう)との関係も問題視されている。

笑うための表情筋が収縮すると脳が楽しいと反射的に感ずる仕組みになっている。また声を出して笑うと鼻腔(びくう)が冷やされ、その結果、脳の温度が低下する。このことも脳が心地よさを感じる理由の一つだ。

笑うという行為に伴う脳の快感は、ストレスで分泌されるホルモンの低下に結びつく。

病気の中にはその人が持っている自己免疫力によって治癒するものも多い。薬が自己免疫力発揮の一助となることもある。

それに加え医療人にはユーモアのセンスが必要なようだ。