『第493話』 【口蹄疫病】 ウイルスの恐怖、身近に
口蹄(こうてい)疫病が英国で猛威を振るい、全世界に広まるのではという恐怖が地球を駆け巡っている。
病原菌は口蹄疫ウイルスで感染力が非常に強い。理由に感染動物がウイルス血症になり、皮膚、各種臓器、筋肉、血液、リンパ節、骨、乳、精液などありとあらゆる組織・体液・排せつ物にウイルスが含まれて感染源になることが上げられる。
これらが稲わらや麦わら、乾燥した牧草に付着し感染域を広げるとともにウイルスは風に乗って60キロ以上飛び、空気感染する。米国で欧州帰りの旅行者を対象に靴、衣類、荷物を消毒するのに躍起になっているのはこのためだ。
感染する動物は、現在知られているだけで57種に上る。中にはアフリカ水牛のように、長期間発病することなく、口蹄疫ウイルスを持ち続けるために防疫上の問題点となっている野生動物もいる。インフルエンザにA・B・C型があるように口跡疫ウイルスには、7種類の血清型がある。さらに似通った亜型があり、部分的にしかワクチンの効果が期待できず根絶することが難しい。
病名の通り、口と蹄(ひづめ)周辺に水泡、び爛、潰瘍(かいよう)などの病的な変化が現れる。幼畜では心筋炎によって50%を超える死亡率を示す。成畜は乳汁分泌の減少、運動障害と摂食困難などによって産業動物としての生産性が著しく低下する。
島国で海外からの病原菌侵入に歯止めが効くはずの日本も、もはや他人事ではない。輸入肉の増大、外国に頼る畜産飼料などによって昨年は宮崎県と北海道で発生している。この時は中国からの飼料が疑われた。治療手段がなく、英国では最終的に100万以上の牛、豚、羊がと殺されると予測されている。
ウイルスは常に変化を続けている。口蹄疫ウイルスは人。に感染することはないが、エイズウイルスのような危機が常に身近にあることを忘れてはならない。