『第492話』 【血液】 適度な運動でさらさらに

理髪店の店先にある、くるくると回転する棒状の看板は赤、青、白の三色からなる。これらはそれぞれ動脈、静脈、包帯(リンパという説もある)のことを表している。

中性から近世にかけてヨーロッパでは瀉血(しゃけつ)が健康法の一つとして流行していた。瀉血はメスや針などで体を傷つけ、過剰な血を抜くことだ。そのメスを握るのが理髪師。ちょっとした手術もこなしていたので理髪外科医と呼ばれていた。

散髪のついでに瀉血を行う習慣の証(あかし)が、あのくるくると回転する看板に残っている。今では瀉血など、毛頭考えられないが、過剰な血液を体外に排出すると体液の循環が良くなり病気の予防になると信じられていた。

現代でも血液がさらさらと流れていることは重視される。例えば血流が悪いと頭重、物忘れ、集中力がなくなるといったことが起こる。耳鳴り、目のかすみを感じることもある。

血流の悪さはやがて動脈硬化や脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞といった病気を引き起こす。血液をさらさらにするには特別な薬など必要ない。まず食生活では動物性脂肪を控え、アルコールも控える。アルコールには脱水作用があり、飲み過ぎると血液中の水分が少なくなり、血液が固まりやすくなる。

血液循環を促進するのは適度な運動だ。一日に30~40分、歩くだけで十分。ただし、早朝の運動は避けた方がよい。朝方には多く分泌されるアドレナリンというホルモンは血液を固まらせる方向に働くからだ。またストレス時にも多く分泌されることが分かっている。

たばこも血管を狭めて血流を悪くするため、ストレス時にたばこの量が増える人は要注意。睡眠中は水分が蒸発するので基本的には寝る前に水分を取ることは良いことだ。