『第683話』 【点眼薬】使用後は目頭押さえて

都会の人込みでは、異常とも思えるほどマスクをした人が目に付く。花粉症の季節とはいうもののひどいものだ。花粉症は鼻炎だけにとどまらず、目の充血、かゆみ、涙目に悩む人もいる。

点眼薬には、抗ヒスタミンと抗アレルギー剤を主成分とした医薬品を使うとよい。アミノカプロン酸やグリチルリチン酸ニカリウムも炎症を抑える作用がある。コンドロイチン硫酸ナトリウムは角膜保護作用を持っている。すっきり感を得るために、カンフルやボルネオールを含んでいる点眼液もある。こうした成分の効果を十分に発揮させるためには、正しく点眼剤を使用することが重要だ。rn

最近はコンタクトレンズを使用している人が多い。ソフトコンタクトレンズには点眼剤に含まれる防腐剤が吸着されることが分かっている。コンタクトレンズを装着しないようにといっても、なかなか難しい。回避するには点眼するときに外し、5~10分ほどたってから再度装着する方法がある。

炎症は、眼球周辺の白目やまぶたの裏の結膜に起こっている。この部分になるべく長時間、医薬品成分をとどめておきたい。涙や点眼液は目頭に集まり、まばたきに伴って目頭にある涙小管と涙嚢(のう)のポンプ作用で、鼻涙管から鼻腔(びくう)に排せつされる。苦味のある点眼剤でのどの奥に苦味を感じるのも、鼻腔から点眼剤がのどに落ちていくからだ。そこで点眼後は、数分間目頭を押さえるといい。

目標が定まらないためか、点眼しようと思ってもうまくできない人もいる。上を向いて「あかんべ」をするように下まぶたを引き下げて点眼すると、うまく点眼できる。それでもうまくできない人には補助器具もある。

眼球とまぶたのすき間の結膜嚢の最大容量は0.03ミリリットルで、涙が約0.007ミリリットル入っている。ここに1滴当たり0.05ミリリットルの点眼をすることになるので、当然あふれる。よく点眼は1滴か、それとも2滴かという質問を受けるが、1滴で十分な理由は、これでお分かりだろう。点眼剤の成分は約5分で吸収される。従って2種類以上の点眼剤を使う必要があるときには、5分程度の間隔を空けるようにする。

点眼剤の成分の多くは光によって分解されやすいので、遮光して保存することが基本だ。このほか、目の充血などを防ぐ最終手段として、花粉が付着しないように水中眼鏡のように目を覆ってしまう予防眼鏡も登場している。