『第686話』 【うつ病】「三種の神器」で克服を

ゴールデンウイークも終わり、張り切って仕事を再開した人、疲れが残っている人、精神的な疲労が取れない人と、さまざまだろう。中には悩みを抱え、うまく気分転換できなかった人もいるのではないだろうか。▽何に対しても興味がわかず、楽しめない▽食欲がないか、逆にいらいらをしずめるために食べ過ぎてしまう▽自分に価値を見いだせない▽特に朝の落ち込みがひどい-といった症状がある場合は、うつ病が疑われる。

このような症状を自覚していればいいのだが、精神科や神経科、心療内科の受診を勧めても「自分は違う」と、はねつける人もいる。そうした周りの意見を聞き入れないのも、うつの症状の一つだ。自覚症状があれば、早めの受診が望ましい。

うつ病の発症には、ストレスと体質が大きくかかわっている。過度のストレスは胃潰瘍(かいよう)や円形脱毛症を引き起こすことがあるように、体にさまざまな影響を与える。また、場合によってはアルコールの過剰摂取、甲状腺の異常や脳梗塞(こうそく)、薬の副作用がかかわっていることもあるので、それらの検査が必要な場合もある。

抗うつ薬は、1959年に「三環系」といわれる種類が発売された後、「フェニルピペラジン系」などが登場した。それぞれの薬に特徴があり、効き目が表れるまでしばらく時間がかかる。副作用として、のどの渇きや眠気、吐き気、めまい、排尿困難のほか、心機能に影響を与えることもあるが、服用し始めのころは副作用が出たからといって自分自身の判断で中止せず、しばらく我慢して医師と相談しながら使うことが必要だ。副作用は、しばらくすると消えることがあるからだ。

90年代に入ると「SSRI」「SNRI」といった新しいタイプの抗うつ薬が開発される。脳内の伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンが、神経伝達部位(シナプス)で取り込まれるのを抑制し、速やかな神経伝達を図る薬だ。副作用も少ないとされるが、ほかの神経伝達物質に影響して合わない人もいる。SSRIはパニック障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの患者にも使われ、その効果が確認されている。

休養、薬物療法、精神療法が、うつ病克服のための「三種の神器」。ゴールデンウイークがいい気分転換、また休養になった人は幸いだ。