『第687話』 【花粉症対策】衣服への付着に要注意

医師や薬剤師の姿を想像してもらいたい。恐らく、白衣姿を思い浮かべる人が多いだろう。看護師であれば、ナースキャップかもしれない。しかし、最近はナースキャップを廃止する医療機関も出てきている。病棟業務上の衛生的意義が薄れ、点滴チューブが引っ掛かるなど危険性の方が高いことが、その理由だ。

日本で最も古い看護衣は1889年に日本赤十字社が規定した「看護婦養成規則」に見られ、和服に白いエプロンと白帽子というスタイルだった。看護師は「白衣の天使」とたたえられるが、フローレンス・ナイチンゲールが活躍した19世紀に白衣はなかった。現在のような白衣が定着したのは昭和初期。今では随分、派手なデザインもあるようだ。

いずれにしても医療関係者にとって白衣は特別な意味を持ち、その思想も表している。白衣を着用する目的は汚れがすぐに分かるようにすることはもちろん、病原菌を媒介して感染症を拡大させないようにすることや、自分が保持する細菌を患者に移さないようにする意味合いなども含んでいる。従って医療関係者が、白衣のまま街をかっ歩することはない。そして、さまざまな汚物やばい菌が付いた白衣で帰宅することもない。

一方、それ以外の人々は、屋外や職場でさまざまな汚れが付着した外出着のまま自宅で過ごすことも多くなった。子どものころ背広姿の父が帰宅すると、母がゆっくりくつろげるように着物を持っていき、着替えを手伝っていた姿を思い出す。

県内の今シーズンのスギ花粉の飛散は終わったが、これからもカモガヤやブタクサの花粉などが飛散し、花粉症を引き起こす。花粉症対策には、この考え方が重要だ。屋外でマスクをしても、衣服に付着した花粉は生活の場に持ち込まれるからだ。

そこで、付着した花粉を取り除く商品や花粉が付きにくい繊維が開発されている。外出時に衣服に吹き付けて、花粉の付着を防ぐ商品もある。衣服の繊維に60ナノメートルの大きさしかない超微細な凸凹を作り、それより大きな直径20~40マイクロメートルの花粉との接触面積を小さくすることで、花粉を付きにくくする。また、繊維に帯電すると花粉やほこりが付着しやすくなるので、帯電防止も図ることができるようになっている。

花粉症対策は屋外だけでなく、生活の場である屋内に花粉を持ち込まないことも重要だ。