『第688話』 【熱性けいれん】刺激与えず呼吸を確保

時間の流れは一定なのに状況によって早く感じたり、遅く感じたりする。例えば救急車を呼んでも気ばかりが焦り、遅いと腹を立ててしまうことがある。近親者の病態が急変した場合は「落ち着いて」と言われても、実際には難しいものだ。

子どもの脳は発達段階にあるため、体温が急上昇すると神経回路の抑制が効かなくなり、熱性けいれんを起こす。熱性けいれんは38度以上の発熱に伴って起こる。手足をピーンと張ったりする強直性けいれんの次に、呼吸が停止して酸素の供給が途絶え、次第に唇や皮膚が紫色に変わるチアノーゼを起こし、さらに手足を一緒に大きく動かすような間代(かんたい)性けいれんへ変化する場合など、さまざまだ。けいれんは全身性で左右対称に起こる。その様子に親は、びっくりしてしまうかもしれない。左右対称でない場合は別の原因が考えられるので、そのことを医師に話してもらいたい。

通常は1分前後で自然に治まるが、数分間続くこともある。とにかく、けいれんを起こしている間は刺激を与えないことだ。揺り動かしたり、大きな声で呼んだりすると、けいれんが治まらなくなる。そして、呼吸(気道)を確保するために、右肩を少し上げて顔を横に向けるようにする。決して口の中に、ハンカチや割りばしを入れたりしてはいけない。そっとしておくことが大切だ。

子どもは大人より体温が高く、元気なら37.5度あっても発熱した状態とはいえない。風邪で発熱するのは正常な反応で、熱に弱いウイルスや細菌を殺してくれる。解熱鎮痛剤で熱を下げ過ぎると、逆に薬の効果が落ちてきたときに体温が急上昇し、熱性けいれんを起こすことになる。そのため、小児科医は熱性けいれんを起こしやすい子どもには、解熱鎮痛剤の使用法を細かく指示することがある。

また、熱性けいれんを起こしやすい子どもには、あらかじめ子ども専用のけいれんを抑えるジアゼパム座薬を処方することもある。通常、37.5度を超えて上昇し始めたら肛門(こうもん)から挿入するよう指示があるが、小児科医によって治療方針が違うので、しっかりと使用方法や間隔、回数を聞いておいてもらいたい。

発熱したら、首の周囲、鼠径(そけい)部(太ももの付け根)、脇の下など太い血管が通っている部分を冷やすと効果的だ。汗をかくので水分補給もするなど、冷静に対処してもらいたい。