『第691話』 【メタボリックシンドローム】動脈硬化のリスク上昇

生活習慣病という呼び名は、誰もがその意味を理解し定着したと思う。三大生活習慣病といえば、がん、虚血性心疾患、脳卒中だ。このほかにも糖尿病、高脂血症、痛風など生活習慣を起因とする疾病が多く存在する。

最近、メタボリックシンドロームという言葉が使われ始めている。分かりやすい言葉で表現すれば「複合生活習慣病」ということになり、「死の四重奏」とも呼ばれる。今年4月の日本内科学会総会で、同学会のほか、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会の八学会がその診断基準を合同で作成し公表したことで、関心が集まるようになった。

診断基準では、まずウエスト周囲径が男性で85センチ、女性で90センチ以上を「要注意」としている。これは蓄積した内臓脂肪の面積が、100平方センチ以上になっている目安の一つと考えられている。さらに「要注意」の対象者のうち①血清脂質異常(中性脂肪150以上、または善玉コレステロール40未満)②血圧高値(最高血圧130以上、または最低血圧85以上)③高血糖(空腹時血糖110以上)の3項目のうち、二つ以上が当てはまる人をメタボリックシンドロームと規定している。

血清脂質異常、高血圧、高血糖から連想される障害は動脈硬化だ。これに高尿酸血症が加わると動脈硬化は、より悪化する。そして行き着く先は、虚血性心疾患と脳卒中ということになる。

虚血性心疾患と脳卒中の発症リスクは、「肥満」「高脂血症」「高血圧」「高血糖」などの危険因子のうち、一つだけだと5.1倍、二つあると9.7倍、三~四つになると31倍以上にもなる。メタボリックシンドロームは、たとえ一つ一つの項目は軽症でも相互に関連している一群の疾患ととらえ、しっかりした管理が必要になる。

生活習慣病の有効な予防策は言うまでもなく、食事療法と運動療法だ。特に肥満対策を中心に考えるとよい。その理由は、脂肪細胞からアディポネクチンというタンパク質が分泌されていることが分かってきたからだ。アディポネクチンには傷ついた血管を修復したり、血糖値を下げるインスリンの効果を助ける働きがある。しかし、内臓脂肪の増加とともに減少してしまう。

詳しい研究はまだ始まったばかりだが、なぜ「肥満大敵」なのか、そのメカニズムが解明されようとしている。