『第695話』 【補聴器】望ましい両耳への装着

心地良い音楽は心を平静にする。しかし、これも聴力が正常であることが条件だ。老化現象と言ってしまえばそれまでだが、年を取れば耳の「聞こえ」は悪くなる。20歳を過ぎれば、耳の老化は始まる。といわれる。しかし、非常にゆっくりと変化していくので、気が付くのは50歳を過ぎてからのことが多い。

家庭で聞き違えや聞き返すことが多くなると家族間の意思の疎通が図りにくくなり、やがて高齢者に対する嫌悪感や高齢者自身に疎外感が生まれかねない。これを回避するには、聴力の回復と維持が必要だ。

聞こえが悪くなる原因や症状には、いくつかある。加齢によって耳の組織が硬くなり高音部が聞き取りづらくなったりする加齢難聴(老人性難聴)、外耳から中耳にかけての機能障害が原因の伝音難聴、内耳や聴神経、脳に障害が発生し、小さな音が聞き取りにくい一方で大きな音は響くといった症状が現れる感音難聴(加齢難聴もこれに含まれる)、これらの状態が混合している混合難聴などだ。加齢難聴と伝音難聴は補聴器使用の対象となる。このほか、薬剤によって引き起こされている可能性もあるので、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し原因を明らかにしておくことが肝要だ。

人は20~20,000ヘルツの周波数を聞き取ることができる。日常生活で話している言葉は200~4,000ヘルツで、補聴器はこの周波数を増幅するのだが、聞こえ方の印象が異なってくる。また、耳を軽くふさぐと分かるが、音がこもって音質が変わる。

補聴器の使用を、聴音感や装着時の違和感から敬遠する人もいる。かつてはマイク、増幅器、スピーカーを小さくしたものを補聴器としていた。今では同様のアナログ増幅型から、CDのようにいったん音声をデジタル化して周波数を16分割し、音量調整できるデジタル補聴器まである。聞こえの度合いに応じて音量や高音域と低音域のバランスを取って音質を細かく調整できるようになり、昔のイメージは一新された感がある。このほか、耳穴をふさがないタイプ、子音を強調する機能や雑音をカットする機能が付加されたものなど、多様な種類がある。

補聴器は価格の問題もあるが、両耳に装着し聞こえのバランスを取るのが望ましい。楽しい会話ができれば、人生の楽しみも膨らむ。