『第699話』 【腎臓病】高血圧の場合は検査を

腎臓病の治療に、降圧剤を使うことがよくある。主に使われるのは、レニンーアンジオテンシン(AR)系抑制薬と呼ばれる一群の降圧剤だ。

もともと、高血圧と腎臓は深い関係にあり、腎疾患を主要因とする高血圧を腎性高血圧という。降圧剤を使うのは、確かに全身の血圧を下げる目的もあるが、もう一つ重要な意味を持っている。

腎臓で尿を作る最小単位の器官をネフロンという。腎臓は、これが約200万個集まってできている。ネフロンは、糸球体とそれにつながる尿細管から成り立っている。糸球体と呼ばれるゆえんは、非常に細い血管があたかも糸状に丸められたようになっているからだ。この糸球体がふるいの役割を担い、血液から不必要な老廃物をろ過している。糸球体に入る血管を輸入細動脈といい、これが糸状に別れて、そして再び輸出細動脈となってまとまり、腎臓外に出ていく。

糸球体では1日約145リットルの原尿が作られる。しかし、原尿が通る尿細管で99%が回収されてぼうこうにたまり、1日約1.4リットルの尿になる。尿細管の機能が1%失われると尿量は2倍となる計算で、いかに精密に動いているかが分かる。

糸球体に異常が起こっても一定の血圧だと血液がろ過できないために、体内に水分がたまって全身血圧が上がる。一方で人体は無理しても尿量を維持しようとするので、全身血圧と独立して機能している糸球体の血圧を上げ、異常を起こしている糸球体で尿を作ろうとする。やがて、これが破たんして、必要以上のタンパク質が排出されるネフローゼ症候群、血液そのものが排出される腎炎症候群などの腎臓病が悪化してしまう。

ARは、輸出細動脈を選択的に広げて糸球体血圧を下げる効果を持っている。いったんは、ろ過器機能が低下することになるが、長期的には腎臓病の悪化を防止することになるため、十分に観察しながら血圧を積極的に下げる治療方法を行う。場合によっては、同様に糸球体血圧を下げる効果を持っている一部のカルシウム拮抗(きっこう)剤を使うこともあるので、主治医の説明を十分に聞いてもらいたい。

かつては本態性高血圧といって、原因不明とされていた高血圧も腎臓疾患が隠れている可能性があることが指摘されている。腎臓病は相当悪くなって初めて、疲労感やむくみといった症状を自覚する。高血圧はその前触れとも考えられ、高血圧の人は腎機能検査を怠らないことが重要だ。