『第700話』 【バリウム検査】胃がん早期発見に有効

薬局で取り扱う注射剤は、インスリンやヒト成長ホルモンなど、自己注射が認められている医薬品に限られる。処方せんは医療情報開示の意味があり、自己注射の場合でも薬の名前、効能・効果、使用量、副作用、副作用が出た場合の対処方法などが情報提供される。しかし、検診時に使われる薬となると「胃の検査なので、胃が動かなくする注射をします」などと言われるだけで、何の薬か分からないという声も聞かれる。

病院では薬剤師が病棟のベッドサイドで、注射剤を含め説明を行っている。また、今年から入院中に使用した薬も合わせ、退院時にこれらの情報を記入したお薬手帳を渡す試みも始まっている。

さて、胃のエックス線検査では、飲みにくいといわれる硫酸バリウム造影剤(以下バリウム)を飲む前に、炭酸水素ナトリウムと酒石酸を顆粒(かりゅう)化した発泡剤を少量の水で服用してもらう。すると、胃内で炭酸ガスが発生して胃が膨れる。「げっぷをせず、我慢して」と言われるのは、げっぷをすると胃がしぼみ、検査に支障をきたすからだ。発泡剤とバリウムの改良が進み、以前より服用するバリウムの量は少なくなった。

通常、バリウム検査といわれる上部消化管エックス線検査、または胃透視検査では胃二重造影法を使う。日本が世界に先駆け開発、確立した胃がんの早期発見に有効な方法で、炭酸ガスとバリウムによって胃壁を見やすくする。バリウムは手で胃壁に塗るわけにはいかないので、ごろごろと転がってもらい胃壁になじませる。胃壁はひだ状になっていて、凹部にバリウムがたまり白く写る。かいようがあると、その中心に向かってバリウムが放射状に白く写る。撮影されたひだの状態で、胃炎などの状態も分かる。従って、上手に転がることは非常に重要といえる。「息を止めて」と言われたときも、おなかに力を入れず、普通に止めればよい。

胃は常に動いている。動けば、ぶれてひだの状態が見にくくなるので、検査の5分前に臭化ブチルスコポラミンを注射し動くのを抑える。緑内障や前立腺肥大を悪化させるので、これらの疾病がある人には使わない。検査後は刺激性下剤を服用してもらい、バリウムを早く体外に出させる。バリウムが出るまでは、なるべく多くの水を飲んだ方いい。

胃がんは早期発見が重要。手術法などの改善によって、ここ20年間ほどで死亡者は半減した。検査方法の意味を知って、「よいレントゲン写真」を撮ってもらいたい。