『第701話』 【肝臓疾患】自覚症状無く検査重要

内臓の多くは自覚症状が出にくいため、「沈黙の臓器」と表現される。肝臓、腎臓、肺、膵臓(すいぞう)、卵巣などの病気は症状が出てからでは遅いということが多い。これらの疾患を早期発見、また予防する意味で、検診と定期的な血液検査は欠かせない。

その代表ともいえる肝臓は、人体で最大の臓器だ。重さは体重の50分の1ほどで、約1.3キログラムもある。一つの臓器に、3本の血管が付いている唯一の臓器だ。小腸で吸収された栄養素は、門脈に入って肝臓に運ばれる。その量は毎分1.2リットル。さらに肝動脈を通じて酸素や栄養を運んでくる血液の量が0.3リットルあり、合わせて毎分約1.5リットルの血液が肝臓に入る。肝臓の静脈は下大静脈につながって心臓に向かう。この量は心臓から送り出される血液量の約5分の1に当たる。

肝臓の働きには想像を超えるものがあり、500ほどの機能がある。まさに「肝心(腎)要」といわれるゆえんだ。解毒、胆汁分泌、栄養貯蔵庫、そして多くの代謝機能を担っている。

生命維持に重要な働きを持つ肝臓は再生能力に優れた細胞で、一部を切除しても2~3カ月で元に戻る。代謝能力もかなりの余裕があるが、それを良いことに酷使したり、肝炎ウイルスの攻撃を受けると機能を停止し、周囲の血管や臓器に影響を与える。使える治療薬は解毒・代謝機能を助ける強力ネオミノファーゲンシーの注射やグルタチオンなどがあるが、種類が限られていて薬物療法だけで治すのは難しい。

肝臓の状態を調べる血液検査項目にGOT、GPTなどがある。GOTはグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミラーゼというアミノ酸合成酵素で、肝臓のほかに心筋、骨格筋、腎臓などにもある。最近、生化学の分野で酵素名が変わったため、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)と呼ばれるようになってきた。GPTは、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミラーゼというアミノ酸合成酵素で、この酵素は肝臓に多く、同様にALT(アラニン・アミノトランスフェラーゼ)と呼ばれるようになっている。

肝臓の細胞が傷害されると、こうした酵素が血液中に出てきて数値が高くなる。また、解毒酵素のγ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)の値は、アルコール性肝炎になると高くなる。

血液検査の意味を知って定期的に検査を受け、薬の服用に至らないよう肝臓をいたわってもらいたい。