『第703話』 【脱毛抑制薬】薄毛に悩む人の救世主?

なぜ、お坊さんは髪の毛をそってまで短くするのか?頭髪が生えてくるありさまは煩悩と同じなのだそうだ。そってもそっても生えてくる。切っても切れない煩悩があることを自覚し、髪の毛をそるのだそうだ。

しかし、毛が薄くなってきた人の中には、もったいないと思う人もいるかもしれない。薄毛に悩んでいる人は多い。育毛剤、養毛剤、そして、医薬品として国内で初めて発毛効果をうたい販売されたミノキシジルも使ったが、思うような効果が得られなかったという人もいる。

先月15日に開かれた厚生労働省薬事分科会で、男性型脱毛症進行抑制薬のフィナステリドの輸入承認申請を了承した。1997年に米国食品医薬品局が世界初の経口内服剤の発毛剤として承認してから、既に多くの国で使用されている。

ただし、日本で発売されるときには、前立腺腫瘍(しゅよう)マーカーのPSAを隠ぺいしてしまう弊害などもあるので市販はされず、医師の処方せんが必要となる見込み。また、勃起(ぼっき)不全治療薬のクエン酸シルデナフィルと同様に保険適用はされず、生活改善薬として自由診療扱いになる可能性が高い。

フィナステリドは、5ミリグラム錠が前立腺肥大症の治療薬として使われてきた。前立腺は男性ホルモンの支配下にある。男性ホルモンの作用を弱めれば前立腺細胞の増殖は止まる。その副作用として、頭髪の異常発毛があった。

フィナステリドは、主要な男性ホルモンであるテストステロンが5α-リダクターゼという還元酵素によって、DHT(ジヒドロテストステロン)に変化するのを阻害する。DHTは毛乳頭の毛母細胞の分裂を抑える働きがあり、これによって脱毛が起こる。従ってDHTが作られなければ、男性型脱毛症は起こらないというわけだ。

ただし、米国の5ミリグラム錠の説明書には「子どもや女性は服用してはいけない」「妊娠中およびその可能性のある女性はこの薬を砕いたり、割ったりして有効成分が露出した状態のものに触れてはいけない」といった注意が記されている。

男性型脱毛症の進行抑制用は1ミリグラム錠で、成分含有量は少なくなっている。しかし、同様の記載があり、男子を妊娠しているときに服用すると、男性外生殖器の形成に関係するDHT量が減少して、尿道下裂などの奇形が起こる可能性がある。そのため、子供や女性は取り扱ってはいけないとなっている。

フィナステリドは、薄毛に悩む人々の「救世主」となるだろうか。