『第704話』 【健康食品】客観的情報集め検証を

「合法ドラッグ」から「脱法ドラッグ」、そして「違法ドラッグ」へ。厚生労働省が幻覚、覚せいなどを連想させる文言を標ぼうした無許可・無承認薬品への対応を変え、それらの化学物質は「違法である」という視点に立って、取り締まり強化に乗り出している。

こうした違法ドラッグは、精神的な変化をもたらすことを効能・効果として標ぼう、違法に取引が行われている。薬事法では、こうした効能・効果を標ぼうできるのは医薬品に限っていて、その観点からすれば、明らかに違法ドラッグとなるわけだ。

厚労省が取り締まりの強化に乗り出した背景には、若者を中心に違法ドラッグの使用が拡大していることがある。また、痩身(そうしん)用健康食品を服用していた女性が死亡した例では、こうした違法ドラッグも服用していたことが判明している。

違法ドラッグの使用拡大が心配されるのは、覚せい剤や麻薬の乱用に進む可能性があるからだ。違法ドラッグが覚せい剤、麻薬使用の入り口となる「ゲートウエー・ドラッグ」となって、社会的危害の発生につながることが懸念される。

また、週刊誌などで見られる健康食品の中には、いまだ証明されていない効能・効果をうたって、適正な医療を受ける機会を妨げる一因になっているものがある。そうした健康食品に対しても、積極的に告発する動きが出てきた。

がんに効くといった効能・効果は、医薬品にしか使えない。また、法律で医療用医薬品は、一般の人に広告・宣伝することが規制されている。薬事法の網の目をくぐり抜けるために、いかにも効果があったかのように架空の体験談を創作、本にして信用させた上、健康食品会社と結託して暴利をむさぼろうとする悪質な出版社が摘発された。

客観性のある医薬品のデータには、都合のいい情報と悪い情報が提供されている。前者は主作用、後者は副作用だ。その両者の情報をよく理解した上で、服用することが重要だ。

口から摂取する物の安全性について、特に食品分野では神経質になっているはずなのに、健康食品となるとすんなり受け入れてしまう傾向があるようだ。特定保健用食品のように、ある程度の効果を標ぼうできる健康食品もあるが、疾病治療への有効性が客観的データで裏付けられた物質があれば、製薬企業が黙っていない。悪質業者にだまされないように自分自身で多くの客観的な情報を集めて、薬剤師や医師など専門家の意見も求めて検証することが必要な時代となった。