『第707話』 【インフルエンザワクチン】接種は流行迎える前に

さわやかな秋晴れが続くと、年末から発生するであろうインフルエンザヘの対応を忘れてしまいそうになる。流行期に向けて乳幼児、受験生、高齢者などのハイリスク者はもとより、予防接種が可能な人は、インフルエンザワクチンを接種しておくことをお勧めする。

本県では、先月2日に「インフルエンザワクチン安定供給対策会議」を開き、ワクチンの供給不足が起きないようにするための調整と接種を啓発する方策を検討している。

この対策会議で、昨年度は初発患者の発生が15年度に比べ1週間遅く、流行のピークが1ヶ月ずれたこと、ピーク時の患者数は11年度以降最高値を示し、シーズンを通して最大の発生規模だったことが報告された。発生内訳を見るとA、B、C型があるインフルエンザウイルスのうち、約6割がB型だった。

また、予防接種数が多い割には患者数が多いという状況になった。流行期になると熱の上がり方などからウイルスを確認しなくてもインフルエンザと診断することが可能になっていて、この患者数が入っていることや予防接種未実施の人(本県では約55%が未接種だった)に多く発生したのが理由と考えられる。今後はワクチンを接種していても、インフルエンザに罹患(りかん)したのかを疫学的に調査しておくことが必要だ。

現在、心配されているのは、抗インフルエンザウイルス薬が効かない耐性ウイルスの出現だ。東南アジアなどで発生している鳥インフルエンザ(H5N1型)に、抗インフルエンザウイルス薬オセルタミビルに対する耐性を持つウイルスがベトナムの患者から検出されている。既に、その兆候が見えているということだ。

抗生物質に対する耐性菌の出現のように、抗ウイルス剤の多用が耐性ウイルスを生む温床になるというジレンマがある。このため体力の温存と対症療法で治療し、インフルエンザ脳症に移行していく危険性が高い患者や高齢で体力がなく、肺炎になる可能性が高い患者などに限って抗インフルエンザ薬を使用すべきだと主張する医師もいる。

耐性菌、耐性ウイルスの出現を防ぐには予防接種を受けて、免疫力を強化しておくことが最も効果がある。朝晩の冷え込みが厳しくなり、木枯らしが吹く前に、ぜひ予防接種をお勧めしたい。併せて高齢者は、インフルエンザに併発することがある肺炎球菌による肺炎を予防するワクチンも接種してほしい。