『第708話』 【AED】心肺蘇生術、身に付けて

「命へのボランティア」として一般の人が、今すぐにでもできることがある。献血と心肺蘇生(そせい)術の一つである自動体外式除細動器(AED)の使用だ。

心肺蘇生術は、よく「ABCD」で説明される。Airway(気道確保)、Breathing(人工呼吸)、Circulation(循環・心臓マッサージ)、そしてDefibrillation(自動体外式除細動)だ。A、B、Cは少々こつがいるので、消防署などに依頼して実技実習を受けた方がいい。基本的には心臓マッサージ15回に対して人工呼吸を2回行う。心臓マッサージは1分間に80~100回の速さで、自分自身の脈拍と比較すればかなり速いスピードで行う必要があると覚えておけばよい。これを4回繰り返して呼吸と脈拍を確認し、なければこれを繰り返す。

ドリンガーの救命曲線によると、心肺蘇生を始めた時間と救命率は心肺停止後2分で90%、4分で50%、10分を経過するとほとんど救命できない。全国の救急車の平均到着時間は約6分で、救命率は10%以下となってしまう。いかに迅速に救命措置を行う必要があるかが分かる。そこで昨年7月、厚生労働省は一般の人がAEDを使用することを認めた。

AEDは音声ガイダンスに従えば、誰でも操作できる。また、救命できなかったとしても罪を問われることはない。AEDが使われる対象は8歳以上または体重25キロ以上からとなっているが、小児用電極パットの開発も進められているところだ。

心臓の電気波形は、刺激の始まりからP・Q・R・S・Tの波形を心電図で見ることができる。心臓の収縮途中の回復波に当たるT波の0.01~0.03秒手前で、野球のボールが心臓部に当たるなどして衝撃が加わると、心室興奮のR波が重なって心室細動が起こる。「心臓振とう」と呼ばれる状態だ。これを回避するために、人は自然に不整脈があったり、心拍は一定であるけれども実は微妙に間隔がずれているのだという仮説があるぐらいだ。

先日、出張の折、JR新宿駅に心臓の赤いマークで表示されたAEDが設置されているのを見た。AEDの設置場所は、インターネットで登録された所が検索できる。県内でも、もっと多くの場所に設置されることが望まれる。

AEDの操作に当たって一般の人は講習を受ける義務はないが、学校教育の中に組み入れて命の大切さを認識し、自信を持って救命措置ができるようにしてもらいたい。