『第719話』 【雪かき】準備運動で炎症を予防

大雪の今冬は度重なる雪かきで筋肉痛などを訴え、整形外科を受診する人が増えているという。冬は気温が下がっているため筋肉痛、腰痛は体にこたえる。

雪かきは重労働だ。普段、運動をしていないと筋肉は弱っている。準備運動もせず、冷たいまま筋肉が委縮した状態で急に負荷を掛ければ、筋肉線維が切れて炎症を起こすのは当然だ。スポーツ選手は筋肉線維が切れて修復されるときに、より太い筋肉になるので過負荷を掛ける。訓練されているので回復も早いが、一般の人はそうはいかない。筋肉は筋肉線維という細い線維が約3万~100万本集まり、束になっている。体にある骨格筋は約600本、体重の約4割は筋肉が占める。筋肉線維はアクチンとミオシンという線維状のタンパク質からできていて、互いの線維が滑り込んで筋肉の収縮と伸展が起こる。

このときアデノシン三リン酸を、非常に効率良くアデノシン二リン酸に代謝しエネルギーを取り出して使っている。しかしアデノシン三リン酸は無限に存在しているわけではなく、ブドウ糖が中間生成物質のピルビン酸となり、クエン酸回路(さまざまな呼び方があってTCA回路、クレブス回路ともいう)を経て作られ、供給されている。クエン酸回路からエネルギーを取り出すには酸素が必要だ。しかし激しい筋肉運動をすると酸素供給が追い付かなくなる。するとピルビン酸から乳酸ができて蓄積し疲労が起きる。

また体が冷えたり、ストレスを受けると筋肉が硬直したままになり、皮神経が圧迫されてしびれや痛みを感じる。筋肉中からの老廃物の代謝が遅れ、血液中に移行して排せつする速度が落ちることにもなり、慢性的に痛みが残る。

雪かきをするときは準備運動をし、体を冷やさないようにしておくことが大切だ。作業を終えた後は、ぬるめの風呂に入って血管を拡張させ筋肉をほぐし、乳酸の排せつを促進するといい。痛みがあれば冷湿布を使い、クエン酸回路で使われるビタミンB群を補給しておくと有効。くれぐれも事故のないように心配りをして、この冬を乗り越えてもらいたい。