『第725話』 【後発医薬品】(下)効果、副作用の管理重要

先発医薬品と後発医薬品(ジェネリック)の効果、副作用に差はあるのか?コマーシャルでは医療費の負担が軽減されることだけが強調されていて、肝心の有効性と安全性についての情報が十分といえない。

安い薬が多く使われれば医療費の削減につながるので、厚生労働省は後発医薬品の使用促進に向けて数々の施策を組み入れてきている。しかし抗がん剤は先発医薬品を使いたいという声があるし、うつ病の人は味や錠剤の形、色に敏感なので変更したくないと話す医師もいる。一方、医療費が安くなるならと後発医薬品を希望する患者さんもいる。健康保険組合の中には、医師に話しづらいのではないかとの配慮から「ジェネリック医薬品お願いカード」を配布しているところもある。

処方せんの備考欄に「後発医薬品への変更可」となっていれば、薬剤師がその選択を行うことになる。変更不可と明記している場合は、その商品名の薬を調剤しなければならない。

後発医薬品は医薬品製造承認申請時に臨床試験データを添付しなくてよい。それは同じ成分の先発医薬品から得られたデータがあるからだ。しかし製造工程が異なると不純物の種類や量が違ってくる。1989年に米国で健康食品用アミノ酸のトリプトファンの製造方法を変更したために不純物の組成が変わり、死者が出たことがある。日本でこのようなことはないと考えられるが、不純物の種類などが異なるのは確かだ。

製剤化したときに医薬品製造企業ごとに特性があり、これが効果の差となって現れることもある。ぜんそくに使うテオフィリン、てんかん治療薬のフェニトインなどは製剤を変えると血液中の薬物濃度が変わることが知られている。特に薬物血中濃度を測定して使用している薬は注意して変更する必要がある。

医薬品は承認されれば大丈夫というものではない。市販後に起こる不測の事態に備えて、常にMR(製薬企業の医薬品情報担当者)が情報を収集している。大手の後発医薬品企業では250人程度で、先発医薬品企業の10分の1以下にとどまっている。各都道府県薬剤師会の医薬品情報センターでは102人の薬剤師が常勤していて国民や薬局・病院に情報提供をしているが、後発医薬品に関する情報が医療機関関係者へ行き届いていないのが現状だ。

品質を確認する方法に溶出試験法がある。通常、薬局で保管しているように一定期間保管した後に試験を行うと、後発医薬品では約1割が規格に適合しない。また直販のみの販売で入手できない後発医.薬品がある。

とはいえ患者さんにとって、医療費が軽減できるという最大のメリットがある。薬に関する多くの情報を基に納得して後発医薬品を使用し、その後は血圧の変化などの臨床効果、副作用の管理について主治医や薬剤師による経過観察を受けることが重要だ。多くの薬を服用しているのであれば、一種類の薬から始めて順次変更していくことをお勧めする。