『第737話』 【薬の使用】情報を得てから適正に

医薬品にはさまざまな規制がかけられている。その規制は医薬品の品質を確保し安全に使用してもらうためや、社会的な倫理を維持するためであったりする。その規制を記している法律には薬事法、麻薬および抗精神薬取締法、覚せい剤取締法がある。そのほかにも医薬品ではないがケシの栽培やケシがらの取り扱いなどにかかわるあへん法、社会生活に欠かせない生活用品を作るときに必要になる毒性物質や一部の農薬を取り締まる毒物及び劇物取締法などがあり、一般の人よりも薬剤師は倫理観を持って順守することが求められている。

がんによる痛みの緩和に使用するモルヒネは錠剤なら1錠単位、注射剤であればミリリットル単位での管理が求められていて、紛失すれば始末書を保健所に提出することになる。従って麻薬小売業の免許を取っている薬局では棚ではなく、法律で定められた麻薬金庫に入れて管理している。

さて先月、次々にドラッグストアなどが薬事法違反で摘発される事態が起きた。処方せんが必要な薬を、処方せんなしに販売していたのだ。昨年4月に薬事法が改正されて、処方せん医薬品という分類が設けられた。それ以前は要指示医薬品という分類で医師、歯科医師または獣医師の処方せんがなければ、一般の人に販売できない医薬品の成分を規制していた。この名称の変更とともに、指定成分の見直しが行われた。以前はOTC薬(大衆薬)として販売が可能だった成分が、処方せんがないと渡せなくなった。

例えば合成抗菌剤のナリジクス酸、駆虫薬のパモ酸ピランテル、ぜんそくの治療薬で気管支を拡張させるアミノフィリン、抗アレルギー性精神安定剤のパモ酸ヒドロキシジンが、それにあたる。

耐性菌の出現が心配される抗菌剤、心臓に負担を掛ける可能性がある気管支拡張薬が要指示医薬品になっていなかったのが不思議なくらいだ。法律の改正によってこうしたOTC薬は調剤室に移されているはずだったが、そのまま販売されてしまった。このような事態が二度と起こらないよう、県薬剤師会でも所属する薬局に再点検を依頼した。

医薬品は情報があって使用できる化学物質だ。薬剤師の服薬指導内容は医師とは異なり、薬剤師法によって調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報提供を行う義務が課せられている。薬局では、処方された薬についてどのようなささいなことでも遠慮なく確認し、情報を入手して適正に使用してもらいたい。