『第263話』 誤飲で死亡事故、適切な管理必要
全国的にまん延した病原性大腸菌O157の感染防止のために、学校、老人福祉施設などだけでなく家庭にまで消毒薬が普及した。ところが、この消毒剤の誤飲による死亡事故が発生している。
これまで消毒に使われた薬剤には、塩化ベンザルコニウムもしくは塩化ベンゼトニウムを成分とする逆性せっけん、次亜塩素酸ナトリウムを成分とする塩素系消毒剤、エチルアルコールが成分となっている消毒用アルコール、グルコン酸クロルヘキシジンを成分にしているものがある。
原液はどれも特異な臭気と味があるので誤飲などは起こり得ないと思われるが、希釈した消毒液が食品用容器に保存されていると、事故が起こりやすい。
特に老人は注意力が落ち、味覚が鈍感になっていて「おかしい」と瞬間的に思っても吐き出さずに飲み込んでしまう。
一般に使われる消毒剤は、安全性が高いとはいえ、細菌を死滅させることができる。当然、人の細胞にも毒性を与えることは明らかだ。
逆性せっけんを大人が誤飲した場合の致死量は、原液で25~250ミリリットル。悪心・おう吐、呼吸筋まひ(呼吸困難)、血圧低下、眼調節異常などが起こる。
5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液の経口致死量は、幼児で15~30ミリリットル程度だが、塩素ガスの発生を抑えるために添加している水酸化ナトリウムも危険で、目に入った場合は十分な流水で洗い流す必要がある。消毒用アルコールやグルコン酸クロルヘキシジンは誤飲しても毒性は弱い。
逆牲せっけんや次亜塩素酸ナトリウムを誤飲した場合には、牛乳を与え、そのタンパク質と結合させ希釈する。手を消毒した後は、流水でよく洗い流すことが肝心だ。
誤飲を防ぐには▽希釈した消毒剤は食品の容器に保存しない▽食品とは区別して保管する▽消毒剤を子供や老人の手が届く場所には置かない-などの注意が必要だ。使いかけた消毒剤があれば、適切な管理を行い、誤飲事故が起きないように気をつけたい。