『第4話』 腸管全体の機能、低下するIBS

現代人は半健康人といわれながらよくやっている。心配事や緊張があるとおなかがごろごろいいだす。食事をした途端トイレに行きたくなる。ガスがたまっておなかが張る。最初は便秘で、出ても固いウサギのふんのような便が出る。そうかと思うと今度は下痢が続いて粘液が混じることもある。なんとなくおなかの調子が悪いが、さりとて我慢ができないわけでもない。そのうち結構な期間がたっている。

戦前は、このような症状は大腸に炎症などがあって起こるのだと考えられ、慢性大腸炎などと呼んでいた。しかしアメリカ医学が入ってきてから、この病気は小腸や大腸など腸管全体の機能が低下したり、あるいは高進することで便通異常を起こすことが分かってきた。これを「過敏性腸症候群」といい、略してIBSと呼んでいる。

IBSは働き盛りで、男子より女性の都会に住む精神労働者に多い。新入社員や受験時に患者が増えるとくれば、精神的なものが引き金になっていると予想がつく。

性格による影響もあるが、自律神経が不安定になりやすい人が今までと違った生活を始めると、自律神経の失調をきたし、その結果、腸管がうまく働かなくなる。心理的なものに加えて、食生活や排便習慣の乱れ、下剤の乱用、妊娠、分べん、過労など身体的なものも引き金となる。

治療は体と心の両面から行う。薬で不安を取り去り、自律神経の調整を図るだけでもIBSはかなり良くなる。並行して、薬(抗コリン剤)で腸の働き過ぎを抑え、整腸剤で便通を元通りにしてやる。漢方薬は個々人の症状に合わせてたくさんの種類があり、早いものでは2日くらいから効果が出る。自己暗示により気持ちを落ち着かせる自律訓練法などもあるが、食事や生活全般にわたって、流行にとらわれない自分に合ったライフスタイルは何かを見直すことが、良い予後につながる