『第20話』 事故につながる無関心な扱い方

「くすりはリスク」(くすりを逆から読むと英語で危険の意味になる)、この言葉を授業の度に必ず繰り返す先生がいた。薬はありがたいものだが、無関心な扱い方はとかくいろいろな事件を起こす。

160粒の肝油ドロップをお菓子代わりに食べた幼稚園児が、急性ビ夕ミンA中毒を起こした。形状からして子供には食べ物にしか見えない。保護者が薬であることを認識して管理しなければいけない。

成人の場合は、ビタミン剤は体に良いというイメージから安易に取りがちだ。水溶性ビタミンは大量に取ってもすみやかに排せつされるが、脂に溶けやすい脂溶性のビタミンA、D、K、Eはいったん体内に取り込まれると簡単に排出できず、蓄積してさまざまな症状を引き起こす。代表的なものでは脳圧亢進(こうしん)症(頭痛、疲労感、吐き気、耳鳴り、おう吐など)や脱毛、かゆみ、脂肪肝などがある。

カプセル剤を水無しで飲むと食道にはりついて溶けだし、その部分が高濃度の薬剤にさらされて穴があくことがある。最近では、水をたくさん(250ミリリットル程度)飲んだ方が薬の効果が早く発揮されると報告されている。

また医薬品をアルミ包装のまま飲み込んで、のどを傷つけたり窒息した例もある。「座薬」という文字を見て、座って飲み込んだ患者もいる。

これらは薬が危険につながるさまざまな可能性があることを示している。薬についての誤った常識は、命取りにもなりかねない