『第22話』 とろろのかゆみ、針状結晶が原因
山芋や里芋の皮をむいたりするときにかゆみを覚えた経験のある人は多いはず。それは、これらの芋に含まれる蓚酸(しゅうさん)カルシウムという鋭くとがった針状結晶が原因とされている。
しかしこの物質は、皮膚にのせただけではかゆみは起こらない。こすると摩擦でこの物質の針状結晶が皮膚に突き刺さり、それが痛みを感じる神経を軽く刺激するのだ。この機械的な刺激が、かゆみを引き起こすといわれている。
このかゆみの度合いも人それぞれで、皮膚の場所によっても異なる。背や胸、腕の関節の内側などにこの物質を塗ってみると、大抵の人がかゆみを覚えるが、手のひらのように皮膚が厚く硬い所ではほとんどの人が感じないという。
また、とろろを食べるとき、唇やその周りはかゆくなっても口の中がかゆいということはあまりない。個人差もあるが、だ液や同時に食べるほかの食べ物によって蓚酸カルシウムの針状結晶が破壊されたり、粘膜に突き刺さっても早めに除去されるためではないかといわれている。
言い伝えとして、酢で洗えとか、塩で洗えなどといわれているが、この針状結晶はアルカリ、熱、紫外線のいずれによっても変化しない。恐らく、よく洗うことでこの物質を機械的に落とそうとしたのだろう。
この蓚酸カルシウムは里芋や山芋のほかに、こんにゃく粉、水仙、ヒヤシンス、アロエなどにも含まれていて、同様にかゆみを起こす。
しかしタマネギに含まれる蓚酸カルシウムは八角棒状結晶をしているため、かゆみを起こさない。
蓚酸カルシウムを含む物すべてがかゆみを引き起こすのではなく、そのメカニズムは蓚酸カルシウムの結晶形態が握っているようなのだ