『第32話』 家庭雑廃水での環境汚染が心配

日本人には「臭い物にはふたをしろ」的な感覚がまだ根強いようだ。

河川の水質汚染、湖水、沼などの富栄養化は一時は改善に向かったが、最近は停滞気味。

工場廃水の規制は非常に厳しくなった一方で、むしろ家庭雑廃水による汚染が心配されている。もともと自然界には、自浄作用がある。河川などにすみ着いた微生物にとって人間の汚物は食物となり、それによって彼らは生命を維持し、結果として環境は浄化される。しかし、微生物が食べきれないくらい汚物が大量になると河川は腐敗し、水中の酸素が失われ微生物も窒息死する。

水質汚濁の指標としてBODという値がある。これは、微生物が生命活動で消費した酸素量のことである。汚ければ生命活動が激しくなり、より多くの酸素が必要となる。

人間は糞(ふん)便として、1日1人13,000ミリグラムのBODを排出し、生活廃水を入れると40,000ミリグラムという途方もない汚物を各家庭から流し出している。一人当たりが使用する生活廃水は約200リットル単純計算でもBOD200ppmとなる。通常汚いとされている工場廃水でも100ppm前後である。このため下水道施設の普及が急がれ、生活廃水も一緒に処理できる合併型浄化槽の設置が推奨されている。

微生物を用いて処理を行う浄化槽には維持管理の義務があり、良好な環境を保全するため適切な管理が望まれる