『第38話』 超音波加湿器は細菌汚染の温床

最近、暖房時に加湿器を使用する家庭が増えた。高齢患者は呼吸器疾患を抱えていることも多く、病院でも超音波加湿器やネブライザー(気道や肺に直接エアゾル=微細な水滴=を送る)が欠かせない。

超音波加湿器は簡便で加湿力も強いが、市販のものは先浄しにくく、汚れが付着しやすい。

超音波による振動が始まると水温はすぐに30度まで上昇し、水道水に含まれる遊離残留塩素も速やかに分解される。そのため殺菌効果がなくなり、水槽内は微生物繁殖に適した環境になってしまう。1ミリリットル中、1万~100万個の細菌に汚染されているという調査報告もある。

水は粒子径1~2ミクロンのエアゾルとなって空気中に噴出する。この大きさのエアゾルは、室内に長時間滞留し、人の肺胞内にも沈着する。

入院患者は抵抗力が低下しているため、汚染されたエアゾルが大量にまき散らされることはとても危険だ。

また抗生物質の乱用は、体内の正常な微生物をも殺すため、防御のバランスが崩れる。そのため健康時には感染しないような病原性の弱い細菌にも簡単に感染してしまう。

アメリカでは、病室内での超音波加湿器の使用を禁止し始めている。代わりとしてフィルター気化式の加湿器がある。これはエアゾルを作らないので微生物も噴出しない