『第42話』 多いたばこ誤飲、急死することも

昭和54年5月に発足した厚生省の家庭用品にかかわる健康被害モニター制度によると、平成2年度までに7,269件の報告が寄せられている。

毎年、小児科ではたばこ誤飲事故が断然トップで、平成2年度は206件のうち78%が6~12カ月の乳児だった。

ニコチンの致死量は、成人で30~60ミリグラムで、小児では紙巻きたばこ1本に含まれるニコチンが致死量だ。

特に注意しなくてはならないのが、灰皿の火を消すために入れた水に溶け出たニコチンだ。1時間で約60%のニコチンが溶け出ている。たばこだけなら初期に吐き出すことが多く、重大な事態になることは少ない。

少量を飲み込んだ場合、初め頭痛、血圧の上昇、唾液分泌の過剰といった刺激興奮作用を示し、後に血圧か下がり、意識もうろうとなり呼吸回数が減るといった抑制作用が現れる。誤飲が多量なら、興奮作用が見られないまま抑制作用が現れ急死する。この場合、胃洗浄や吸着剤、下剤の投与だけでなく、硫酸アトロピンやジアゼパムといった薬物の投与が必要となる。

誤飲した時には、どのくらいの量をどの状態で摂取したかを確認し、医師に告げる。症状は普通30分程度で現れる。口の中をかいでもニコチン臭がせず、誤飲したか確認できない場合は、2時間以上観察して症状が出なければ心配ない。

乳幼児は唇が敏感で物を口で確認する習性があり、家庭内には医薬品、硬貨、電池といった危険物があふれている。乳幼児の誤飲事故は、保護者がそばにいながらちょっと目を離したすきに起こっている