『第49話』 水道水の危険物、トリハロメタン

電子工場やドライクリーニング工場では、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1・1・1-トリクロロエタンといった塩素系有機溶剤が用いられている。油を非常によく溶かし、洗浄力が強いためだ。しかし毒性も強く、労働安全衛生法で第一種、第二種有機溶剤に指定されている。 

これらの廃液が地中に浸透し、井戸水に入り込んで問題となるが、上水道には配管に亀裂がある場合を別にすれば入り込むことはまずない。 

これらの工場廃水は現在、活性炭による吸着排水処理が行われたり、有機溶剤を使わない界面活性剤による洗浄工程に変わってきている。しかし、蒸気洗浄器などで一度揮発したものが飛散し、大気中で再び雨水に溶け、地上に戻ってくることが心配される。 

上水道で特に問題になるのはトリハロメタンだ。フロンやテトラクロロエチレンなどが自然界では生成されないのと違い、水道水を浄化する殺菌過程でできるやっかいな物質。以前、麻酔剤として使われていたクロロホルムもトリハロメタンの一種だ。 

これらは発がん性があり、水質基準が定められている。最近では塩素の注入量を低く抑えたり、オゾンによって殺菌する方法が考えられている。 

家庭で水道水からトリハロメタンを除去するには浄水器もあるが、30分程度煮沸する方法が確実だ。 

一度失われた自然を元に戻すためには、長い時間が掛ることを肝に銘じておきたい。