『第713話』 【感染症予防】手洗い、うがい励行を

本年は、さまざまな意味で感染症に関する話題の多い年だった。感染症は汚染、感染、発病の順で起こる。感染とは病原微生物が体内に侵入または付着して、人体の組織に定着し増殖することをいう。従って病原微生物に汚染された物品や空気、あるいは人・動物などの感染源から自分自身の体が汚染されなければ、感染、発病することはない。

感染症が発病に至るまでには必ずこの順序をたどるので、感染症予防の三大原則として「感染源の遮断」「感染経路の遮断」「宿主の感受性の遮断」がある。感染源と感染経路の遮断では、うがいや手洗い、消毒の実施という防止対策がある。宿主の感受性を断つためには、免疫力を獲得するワクチンの接種とともに、十分な休養と栄養の摂取が必要だ。

消化器系感染症は食品に混入したり、手に付いた病原微生物によって経口感染することが明らかなので、食品の加熱処理(調理)、手の傷の処置などの予防方法を実行することが感染から身を守る鍵になる。2年前に牛海綿状脳症(BSE)問題で輸入禁止となった米国産牛肉の輸入再開においても検査システムを確実に履行し、チェック機能が働かなかった建築物の耐震強度偽装問題のようにならないようにしてもらいたいものだ。

さて、鳥インフルエンザが大きく取り上げられた要因は人から人へ感染する新型インフルエンザに変異する可能性があり、さらにインフルエンザウイルスは空気感染するからだ。飛沫(ひまつ)感染であれば、危険なのは唾液(だえき)が飛び散る数メートルに限られる。しかし空気感染は感染範囲が広く、病原微生物で汚染された空気を吸い込むことで感染が成立してしまう。故に人が多く集まる場所には行かないようにし、帰宅したらうがいと手洗いをするということになる。

マスクの着用も花粉症などでは有効だが、ウイルスは通り抜けてしまう。だが最近、この欠点を改善したマスクが開発された。抗原抗体反応を利用して、ウイルスを吸着・排除する仕組みだ。しかしマスクは雑品扱いで、この効能・効果を標ぼうすると薬事法違反になってしまう。当センターから感染防止に有効なマスクの詳しい情報提供ができないのは残念なことだ。

マスクは多くの呼吸器系疾患や一部の消化器系疾患の予防に効果がある。外出の際にはマスクを着用し、手洗い、うがいを励行するなどして健康を維持し、元気に新年を迎えてほしい。