『第714話』 【後発医薬品】臨床データ取り利用を

今年は戌(いぬ)年。「戌」という字は「犬」の意味ではなく、作物の収穫を意味する文字だそうだ。それが時間や方角を表す文字に使われるようになり、その音から戌(犬)年になったという。薬事に関しても、本年中に「収穫」が始まる作物ともいえる課題がいくつかある。

厚生労働省は一昨年5月に「医薬品販売制度改正検討部会」を設置し、大衆薬をその危険度ごとにA、B、Cに分類する作業を行ってきた。併せて、その区分ごとに販売資格制度も検討している。先月、その結果をまとめた報告書が公表された。早ければ3月にも国会で審議され、薬事法の大きな改正になることが予想される。

薬剤師には、販売または授与の目的で調剤したときは、患者などへ調剤した薬剤の適正使用のために必要な情報を提供しなければならないという義務が課せられている。大衆薬については「情報提供することが望ましい」となっているが、報告書には危険度の高いものを販売する場合は義務化することなどが盛り込まれている。

もう一つは後発医薬品の利用促進だ。盛んに「医療費が安くなります」とPR合戦も展開されている。厚労省は同一成分なので効果に変わりはないとしているが、当会の試験検査センターで製剤学的な特性を調べる溶出試験を実施したところ、その15%程度に規格を満たさない医薬品が見つかっている。

また溶出試験には合格するがふん便中に錠剤が排せつされる事例などがあり、効果がないのではと心配する患者さんもいる。徐放性製剤にはスポンジ状のゴーストタブレットに医薬品成分をしみ込ませて徐々に溶出させている剤形があり、この錠剤が硬いためにふん便中に出てしまう。メーカーに問い合わせると、添付文書を改定したという回答。しかしこちらには、何の情報もきていないのが現状だ。

後発医薬品の利用促進対策として処方せんの書式を変更し、同一成分の薬に変更してもよいと指示ができるようにすることが検討されている。しかし先発医薬品と同様の効果を示すか否かといった情報があまりにも不足していて、混乱を招きかねない状況だ。先発医薬品から後発医薬品に変更、またその逆の場合はしっかり臨床データを取って経時的に検査して利用することが肝要だ。

こうした課題を上手に「収穫」することができればいいのだが、事を急ぎ過ぎている印象を受ける。本年も県民の健康に役立ち、実りある一年をもたらすようなさまざまな薬事関連情報を提供したい。