『第715話』 【ドーピング】薬などの成分に注意を

来月10日から17日間にわたり、冬季五輪がイタリアのトリノで開催される。日本選手団主将に決まったスピードスケートの岡崎朋美選手らの活躍を期待したい。

さて、五輪というとドーピングが話題に上る。日本は武士道精神が根付いているためか、選手の置かれている環境は精神主義を重んじる非科学的な風潮もあるようで、ドービング問題に疎い感がある。しかし世界では科学的に解析されたトレーニング方法と栄養管理、健康管理が行われている。運動能力を高める研究も進んでいて、ドーピング問題に研究が及ぶ環境にある。

禁止薬物にはさまざまある。よく知られているのが風邪薬(総合感冒薬)。せき止めのメチルエフェドリン、エフェドリンが入っていたら、興奮剤の使用ということになってしまう。エフェドリンは生薬である麻黄にも含まれ、ストリキニーネを含有する健胃薬のホミカも禁止されている。麻黄を含む漢方薬は多く、葛根湯、小青竜湯などがある。漢方薬や生薬だから大丈夫というわけではない。風邪薬類は3日程度ですべて体外に排せつされるので、競技を行う3日以上前に服用を中止すればドーピング検査で陽性になることはない。

先月、ドイツのサッカー選手が「のむ男性型脱毛症改善薬」のフィナステリドで6カ月の出場停止処分を受けた。また先日、スケルトンのワールドカップ男子総合で首位の選手が同薬で出場停止処分を受けた。本人は故意にドーピングをしたわけではなく、禁止成分に当たることを知らなかったとしている。いわゆる「うっかりドーピング」だったわけだ。フィナステリドは、男性ホルモンの検出を妨げてしまうことから禁止されている。日本でも先月発売されて話題となっているようだが、スポーツ選手は気を付けてほしい。育毛、養毛剤の中には男性ホルモンのテストステロンを含むものもあるので、これも注意が必要だ。

またサプリメントには含有成分がよく分からないものがあり、使用しても大丈夫かどうか不明な点が多い。できれば日本アンチ・ドーピング機構のホームページに使用可能なサプリメントの商品名が提供されているので、それを使用することを勧める。

来年は「秋田わか杉国体」が開催される。アンチ・ドーピングに関する啓発も行われているところだが、「うっかりドーピング」を防ぐには薬やサプリメントなど、口にする物の成分を意識することが重要だ。