『第717話』 【医薬品情報】適正使用の理解が重要

各都道府県の薬剤師会が運営する医薬品情報センターの担当薬剤師研修会と、日本製薬工業協会が主催する患者などからの薬の相談に関するシンポジウムが先日、それぞれ開催された。どちらも医薬品情報の収集・整理・評価・提供といったことに重点が置かれていた。

日本では医薬品等適正広告基準によって、一般の人を対象にした医療用医薬品の広告や宣伝ができないようになっている。薬事法では誇大広告を禁止し、特定疾病用の医薬品について一般の人に広告することを制限している。特に前者の規制は、情報が隠ぺいされているかのような印象を受けるかもしれない。

また製薬企業は医師と患者の信頼関係を損ねる原因になりかねないという理由で、患者さんに添付文書(医療用医薬品に添付している医薬品情報)を渡さない企業の方が多い。医療関係者と患者側が、同等の情報を持って話し合いができる環境を整備することが必要だということに異論はないだろう。それでも製薬企業が危惧(きぐ)する理由は情報の評価が両者で異なり、トラブルになることがあるからだ。

医療提供側は効き目と副作用を念頭に置き、患者の病状を十分に把握した上で、専門的な観点から薬を選択し治療を行う。一方、患者の関心事は副作用に置かれることが少なくなく、そうすると「このように危ない薬を、なぜ使うのか」といった不信を抱く事態が起こりかねない。

しかし実際には、「医薬品医療機器情報提供ホームページ」(http://www.info.pmda.go.jp/)から添付文書情報を入手することなどが可能。一般の人が医薬品情報を入手できるようになっており、矛盾が生じている。情報提供の在り方や医薬品等適正広告基準を見直す必要がある。

医薬品情報は一部だけを見て判断するのではなく、さまざまな情報を収集して整理することから始まる。そして薬を評価する際には、適正な使用方法を理解することが重要になる。副作用の発現を最小限にとどめることができるからだ。自分自身の体質を把握しておくことも大切だ。

全国各地の医薬品情報センターの薬剤師は相談者に適正な使用方法を知ってもらい、薬の客観的評価を理解してもらえるか否かが問題だと口をそろえる。副作用がない薬はない。恐れて使わないのではなく、副作用を防ぐ正しい使用方法を身に付けていくことが重要だ。