『第720話』 【カラーコンタクトレンズ】健康被害が発生し危険

3月は学びやからの巣立ちの季節だ。卒業式では送る言葉に目頭が熱くなり、涙がほおをぬらす。そういえば、人は感情の動物といわれることを思い出した。音楽療法などの感覚療法が生体の自律神経に影響することが、このようなことでよく分かる。自律神経のうち交感神経が刺激されて興奮し、涙が出る。これを情動性分泌という。涙の分泌が正常に行われていることは、目が健康である一つの証しでもある。

ある高校の卒業式で卒業生が一人一人立ち上がる姿を見ていて気付いたのは、眼鏡をかけた女子生徒が少ないことだ。最近の生徒や学生はコンタクトレンズの使用者が多い。15~24歳の女性では約半数が使用している。その約8割はソフトコンタクトレンズだ。

日本では名古屋大学の眼科医水谷豊氏が昭和25年に歯科用材料で眼球前面の型を取り、プラスチックを磨いて作ったのが始まりだ。ガラスは強度を持たせて割れにくくすることが難しい上、加工が困難。この時に用いたのは1940年代に開発されたポリメチルメタクリレートという素材だった。しかし、この素材は酸素を透過する特性がなく、短時間しか使えなかった。現在は素材を改良して酸素透過性が高められ、汚れる前に1日で使い捨てる、より簡便なタイプのソフトコンタクトレンズも登場している。

コンタクトレンズは薬事法で規制される高度管理医療機器だ。しかし、おしゃれを目的にしたカラーコンタクトレンズは視力補正を目的としていないので、薬事法の規制対象にならない。ところが、このおしゃれ用カラーコンタクトレンズを調べたところ10銘柄のうち2銘柄で、目の粘膜を刺激する細胞毒性があることが判明した。また4銘柄で色素が溶出し、アルミニウムやチタンが溶出しているものもあった。既に結膜炎、角膜炎、角膜上皮びらんなどの健康被害が発生している。安全性を考えると、決しておしゃれ用カラーコンタクトレンズを使用してはいけない。

コンタクトレンズは、非常にデリケートな角膜の上に載せる。定期的に眼科医を受診して、今度は晴れ晴れとした感涙の入学式や入社式を迎えてもらいたい。