『第721話』 【薬局の役割】薬品の品質確認も担う

医薬品の品質は変化しないという認識でいる人が多いのではないだろうか。しかし食品などと同様に有効期限がある。保存方法が悪いと変色や成分含有量の低下、あるいはかびが生えるといった変質が起こる。

製薬企業は通常、製造年月日から3年を有効期限とすることが多い。有効期限は過酷試験といって室温40度、湿度70%で一定期間保存したときに変質しないことを確認して決め、この試験結果は医薬品製造承認書に記載されている。

問題なのは、この過酷試験を行うときの包装形態だ。100錠、1000錠といった具合に包装単位ごとにアルミパックされ、紙製の外箱に入れられた状態で試験を行っている。製薬企業は未開封の医薬品を添付文書に記載した方法で保存した場合だけ品質を保証する。

しかし病院や薬局に届いた医薬品は開封し、調剤しやすいように調剤棚に保管されるのが実態。従って医療用医薬品の大半は製薬企業の保証がないことになる。中には軟こう剤や点眼剤のように、個々の包装に有効期限が印字されている医薬品がある。この場合はキャップを開けず、未開封なら製薬企業が保証する。

では皆さんが服用している薬の品質がどのように保たれているかというと、それぞれの薬局が品質を確認する仕組みになっている。薬局は随時、医薬品の試験検査を実施することが求められ、品質確認を行うことが義務付けられている。当会には試験検査センターがあり、所属する薬局が試験検査費用を負担し医薬品試験を依頼して品質確認をしている。日本薬剤師会でも独自に医薬品の品質が保たれているか監視している。

昨年、問題がある医薬品が見つかった。抗菌剤のノルフロキサシンという成分を含む医薬品だ。県内の薬局からこの医薬品の提出を求め同センターで溶出試験を実施したところ、205検体のうち171検体で、その成分が十分に溶け出さなかった。並行して国立医薬品食品研究所と共同研究を行った結果、ノルフロキサシンに水分が結合することで溶出性が悪くなっていることが判明した。さらに、この現象が過酷試験の条件下では起こらないことも分かった。これらの結果は製造企業に知らせてあり、包装形態の改善が検討されている。

薬局は調剤するだけのところのように思われがちだが、安全性が確保できるように医薬品に関する情報提供を行い、薬物治療効果が十分に発揮できるように品質確認もしている。みなさんも医薬品の品質管理について関心を持ち、正しい保存方法に関する情報を薬剤師から入手してもらいたい。