『第724話』 【後発医薬品】(上)事前に変更認める形に

4月から診療報酬・調剤報酬の改定があり、病態に変化がない限り医療費が安くなっているはずだ。そのほかに皆さんが目にしている中で、今までと違うことが主に二つある。一つは医療費の明細が渡されていることで、医療費明細は以前から明らかにすべきだった。IT化が進み、迅速に明細を作成できるようになってきた。もう一つは処方せんの備考に「後発医薬品への変更について」という欄が設けられていることだ。今までは後発医薬品に変更して調剤する場合は、その都度、処方医への確認を行ってきたが事前に許可する形になった。

後発医薬品は、かつて先発医薬品の特許期限が失効した後にゾロゾロと出てくるので、ゾロ商品とあだ名されていた。しかし平成8年、大蔵省(現財務省)は医療費抑制のため、先発医薬品より安い後発医薬品の使用促進対策を厚生省(現厚生労働省)に求めた。ゾロ商品という悪いイメージをぬぐい去るために「後発医薬品」「ジェネリック」という言い方にもなってきた。

当時、厚生省は先発医薬品と後発医薬品の同等性(製剤学的同等性、生物学的同等性、治療学的同等性)を比較して評価・担保できるのか、その根拠となるデータを持っていなかった。そこで先発医薬品の生物学的試験データを基礎に、薬を人に用いず同等性を確認する手段として溶出試験法による確認方法を確立する試みが始まった。人の試験をしないのは膨大な費用が掛かるからだ。7年3月以前に承認された後発医薬品については、おおむね確認方法が通称オレンジブックと呼ばれる公定書にまとめられている。

その後、9年末以降に発売された後発医薬品では人に対する試験も行い、生物学的同等性を確認することを盛り込んだガイドラインが公表された。従って同年の前後で、生物学的同等性に関する医薬品承認申請時の考え方が異なっている。

成分が同じ錠剤や軟こうといっても微妙に違いがある。錠剤では医療品添加物、不純物などが異なる。軟こう剤でも成分を溶かし込んだり分散させている軟こう基剤が異なると、効き目や使用感が違ってくる。日本で認可を受けた医薬品成分は約2,800種だが、成分が同じで銘柄や剤形が異なる医療用医薬品の総数は13,000種に上る。

特許期限が失効していない先発医薬品には後発医薬品はない。先発医薬品もこのたびの薬価改定で価格が下がっていて、さほど割安感がないこともある。薬局では必ずしも後発医薬品をそろえていないことがあるので、変更が可能かよく相談してほしい。